CLAS BUSINESS

お役立ち情報

会社設立とは?メリットや流れ・費用などを徹底解説

すでに何らかの事業をお持ちか、これから事業立ち上げを検討している方にとって会社設立のメリット・デメリットを整理し、最適な事業のあり方を検討するのはとても重要です。本記事では、会社設立のメリット、設立の流れ、設立費用などを幅広く解説します。会社設立を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

1.会社設立について知っておくべき基礎知識
1-1.会社を設立する方法
1-2.会社設立にかかる期間
1-3.新設法人数の傾向は?
2.会社を設立する際の主な法人形態と特徴
2-1.株式会社
2-2.合同会社
2-3.株式会社から合同会社に変更できる?
3.会社設立にはどんなメリットがある?
3-1.資金調達がしやすくなる
3-2.社会的な信用度が大きくなる
3-3.独自の決算期を設定できる
3-4.個人事業主に比べて節税しやすくなる
3-5.厚生年金に加入できる
3-6.幅広い人材を採用できるようになる
3-7.事業承継がしやすくなる
3-8.補助金の上限額が大きい
4.会社設立に際して注意しておきたいポイント
5.個人事業主・フリーランスが会社設立すべきかどうかの判断基準とは
6.会社設立の流れ
6-1.会社設立のための概要を決定
6-2.定款の作成および認証
6-3.資本金の用意・払い込み
6-4.登記申請書類の作成および申請
6-5.各役所への届出
6-6.法人口座の開設
6-7.従業員の募集・採用
7.会社設立に際して相談できる専門家とは
7-1.税理士
7-2.司法書士
7-3.行政書士
8.会社設立にかかる費用
8-1.会社設立にかかる費用の種類
8-2.会社設立にかかる費用を減らすためには
8-3.オフィスを構える場合の費用感は?
9.まとめ

会社設立について知っておくべき基礎知識

会社設立は、所定の手続きを行い、法人を作る行為です。会社を作りたいと考えている人も多いかもしれませんが、会社設立には事前に知っておくべき基礎知識が多くあります。ここでは会社設立の方法や、設立にかかる期間を解説します。

会社を設立する方法

会社設立の方法としては、主に株式会社と合同会社の2つがあります。その他、合資会社や合名会社という形態もありますが、上記2つに比べるとマイナーです。

会社を設立する前にまず知っておきたいのは、「どのような会社を設立するのか」という点です。日本で最もよく知られている形態は株式会社ですが、近年では合同会社を選択する人も増えています。

かつては有限会社の形態で設立する方法もありましたが、2005年に会社法が成立、2006年に同法が施行されました。それに伴って有限会社の新設はできなくなっています。

会社設立にかかる期間

会社設立にかかる期間は、一般的には3週間から1ヶ月ほどです。手続きを早急に済ませるなど期間を短くする努力をすれば最短2週間程度で済ませられますが、どれだけ早くても2週間なので、ある程度まとまった期間は必要と考えておきましょう。

会社設立にはさまざまな手続きが必要になるため、手続きが上手くいくかどうかで、会社設立にかかる期間が異なります。手続きの流れに関しては、後に詳しく解説します。

新設法人数の傾向は?

帝国データバンクの調査によれば、2021年8月の新設法人数は11,090件でした。前年同月比と比較すると109.8%であり、合計11,090件のうち、最も多かったのは東京都の3,351件です。

新設法人数は長期的には増加傾向です。2019年12月頃から新型コロナウイルス感染症が拡大したと考えると、コロナ禍でさえも新設法人数が増えていると分かります。

またもう1つ興味深いデータとしては、「株式会社よりも合同会社のほうが増加率が高いこと」が挙げられます。

ここで「株式会社と合同会社って何が違うの?」と疑問を抱えている方も多いでしょう。そこで次の項目では株式会社と合同会社の違いや、それぞれのメリット・デメリットを確認します。

会社を設立する際の主な法人形態と特徴

主な法人形態としては、株式会社以外にも合同会社や合名会社、合資会社があります。

特徴 責任 自治権
株式会社 所有と経営が分離 有限 小さい
合同会社 所有と経営が一致 有限 大きい
合名会社 所有と経営が一致 有限・無限 大きい
合資会社 所有と経営が一致 無限 大きい

株式会社は法人の所有者と経営者が別であり、「所有と経営が分離」しています。一方株式会社以外の3つは、法人の所有者と経営者が同一です。

有限責任や無限責任は、会社の債務に対する責任の範囲を指します。無限責任を負う主体は、会社が倒産した際に、負債総額の全額を支払わなければなりません。対して有限責任は、負債総額ではなく出資額が弁済額の上限になります。当然、有限責任の方がリスクは小さくなると言えます。

会社における自治権とは、「会社経営の自由度」を指します。株式会社は株主の存在があるため、経営者が自由に経営方針を決められるわけではありません。一方、合同会社や合名会社、合資会社は、資本の所有者と経営者が一緒なので、比較的自治権の大きい法人形態になります。

合名会社は有限責任社員と無限責任社員で構成されており、合資会社はすべてが無限責任社員です。株式会社と合同会社は、リスクが限定されている「有限責任」という利点があり、合名会社・合資会社でなく株式会社・合同会社いずれかが選ばれるケースが多くなっています。

ここでは、株式会社と合同会社について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。

株式会社

株式会社は、株式を発行し、資金を調達して経営される会社です。合同会社との大きな違いは、経営学で「所有と経営の分離」といわれるように、出資者(資本の所有者)と経営者が異なっている点です。

株式会社は、所有と経営が分離されていることで、会社の負債が代表者の負債と切り分けられ、「間接有限責任」という扱いになります。

株式会社は株式を発行できるため、資金を調達しやすく、社会的な信用性も高い法人形態です。ただし合同会社と比較すると、設立費用が比較的高いというデメリットがあります。設立費用に関しては、後の項目で詳しく触れますので、ひとまず「合同会社よりも株式会社の方が設立にお金がかかる」と認識しておきましょう。

合同会社

合同会社は、2006年5月1日に施行された会社法によって、新しく設けられた法人形態です。所有と経営の分離が行われている株式会社とは異なり、合同会社では出資者と経営者が同じになっています。

合同会社のメリットは、間接有限責任と自治権の広さです。

項目の冒頭でも解説したように、合同会社の出資者は、出資額を限度として責任を負います。そのため、基本的に債権者から直接責任の追及をされることはありません。なお「間接」とは、出資者が会社の債務について、間接的にしか責任を負わないことを指します。

上記のメリットから、合同会社が2番目に多く選ばれていますが、認知度の低さや上場できないなどのデメリットもあります。

株式会社から合同会社に変更できる?

結論からいえば、株式会社から合同会社への変更は可能です。

会社を経営しているうちに、「株式会社から合同会社に変更したい」と考えることがあるかもしれません。その場合、組織変更計画書の作成や債権者への個別催告など、さまざまな手続きを踏んだうえで変更が認められます。

一方で、合同会社を経営しながら「株式会社ならではのメリットを享受したい」と考えるケースもあるでしょう。もちろん株式会社から合同会社への変更と同様、合同会社から株式会社への変更も認められます。

ただしいずれにしても、組織変更には多くの専門知識が必要です。金銭的・時間的なコストがかかることを念頭に置き、なるべく中長期的な視点で法人形態を決めておくとよいでしょう。

会社設立にはどんなメリットがある?

会社設立にはさまざまなメリットがあります。法人の方が補助金の上限で優遇されているなど、コロナ禍特有の事情もあり、今後ますますメリットが多彩になるかもしれません。ここでは会社設立の代表的なメリットを、8つのトピックに分けて解説します。

資金調達がしやすくなる

資金調達がしやすくなるのは、会社設立の大きなメリットです。例えば個人事業主の場合、金融機関から融資を受けようとすると、第三者保証人を要求されるケースが多くなります。

法人は明確な財務管理が必要とされるため、金融機関にとっても融資の判断がしやすく、結果的に資金調達がしやすくなります。

また法人形態が株式会社であれば、株式の発行ができるため、より資金を調達しやすくなるでしょう。一方で会社の場合、買収されるなどのデメリットもあるので注意が必要です。

社会的な信用度が大きくなる

株式会社の項目でも解説した通り、社会的な信用が大きくなるのも会社設立のメリットです。会社設立の流れでも詳しく説明しますが、手続きの過程で「登記」をしなければなりません。非常に手間はかかりますが、登記をすることで社会的な信用を得やすくなります。

ただし最近では、株式会社であっても資本金1円から設立できるようになりました。そのため、必ずしも「会社=信頼できる」わけではありません。日々の事業を継続し、ステークホルダー(利害関係者)からの信頼を積み重ねていくのが大切です。

独自の決算期を設定できる

個人とは異なり、独自の決算期を設定できるのも会社設立のメリットといえるでしょう。個人事業主の事業年度は1月から12月までと決まっており、確定申告の時期も毎年2月半ばから3月半ばまでの固定です。

しかし会社の場合は、決算期を自由に決められるため、事業の計画が立てやすくなります。ただし繁忙期と重なる決算期を設定しては事務負担が大きいため、会社の業務内容を考慮したうえで決算期を設定するべきです。

なお、「3月決算」「9月決算」の言葉があるように、3月と9月を決算期にしている会社が多く、国税庁の集計「決算期月別法人数」でもそのような状況が見てとれます。

個人事業主に比べて節税しやすくなる

個人事業主に比べて、節税するための方法が多い点も見逃せません。例えば課税金額が1,000万円の場合、個人事業主に課税される所得税率は最大33%です。一方、会社に対して課税される法人税率は所得800万円以下の部分が15%、所得800万円を超える部分が23.20%になります(資本金1億円以下の法人などの場合)

他にも以下のようなメリットがあります。

  • 欠損金を10年間繰越できる
  • 経費対象の幅が広い
  • 消費者免税制度もある
  • 青色事業専従者者給与が適用できる
  • 給与所得控除がある

ただし会社設立の恩恵を最大限に受けるためには、「売上が多いかどうか」が重要になるので注意しましょう。

厚生年金に加入できる

会社設立をすると、厚生年金に加入できます。厚生年金保険は、国民年金の上乗せ部分となる年金制度です。いわゆる「二階建て」の二階部分であり、厚生年金に加入していれば、老後に受給できる年金額が増えます。

個人事業主は厚生年金に入れませんが、会社を設立すれば会社を通して加入できます。ただし厚生年金の加入は、国民年金だけの場合に比べて保険料の負担が増えてしまいます。また厚生年金の加入は任意でなく義務であり、1人社長の場合も加入が必須になるので注意しましょう。

幅広い人材を採用できるようになる

個人事業主として活動するよりも、会社設立をした方が、より幅広い人材を採用できるようになります。求職者の目線で考えると、「不安定な個人事業主よりも、基盤が安定している場所で働きたい」と考えるのは自然でしょう。そのため社会的信用度の高い「会社」に人材が集まりやすくなります。

しかし会社であれば優秀な人材をそのまま採用できるわけではなく、競合他社との比較のなかで抜きん出ている要素が必要です。例えば待遇や福利厚生、働きやすい環境を充実させ、求職者に「ここで働きたい」と思わせるようなメリットを提供しましょう。

事業承継がしやすくなる

事業承継がしやすくなるのも会社設立のメリットです。昨今では少子高齢化の影響を受け、後継者となる子どもが不足している問題があります。そのため「事業承継をしやすいかどうか」はとても重要な要素です。

会社の場合、代表者が亡くなることによって会社の預金口座が凍結されたり、会社の資産が相続の対象になったりすることはないため、個人事業主に比べて事業承継がしやすいといえます。ただし手続きが少々煩雑なので、事前に知識をつけておきましょう。

補助金の上限額が大きい

補助金の上限額が大きいのも会社設立のメリットです。例えば事業復活支援金は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者、なおかつ中小法人・個人事業主が対象となります。法人・個人事業主のどちらも対象になりますが、法人の給付額は最大で250万円、個人事業主は最大50万円となります。

このように、会社設立をすれば、給付される補助金額が増える可能性があります。これが「コロナ禍でも新設法人数が増えている理由」の1つと言えるでしょう。

会社設立に際して注意しておきたいポイント

会社設立に際して注意しておきたいポイントは、以下の4つです。

  • 会社の設立・運営に時間的・金銭的コストがかかる
  • 社会保険への加入義務がある
  • 事務負担の増加
  • 会社の資金を個人的な出費に使えない

会社を設立するためには、さまざまな諸経費がかかります。また「会社設立にかかる期間」の項目でも確認したように、3週間から1ヶ月ほどの期間がかかるなど、発生するコストは金銭的なものだけではありません。

社会保険への加入義務がある点にも注意です。厚生年金に加入できることをメリットとして紹介しましたが、裏を返せば、どんなに資金的な余裕がなくても厚生年金に加入しなければなりません。保険料は会社と従業員本人が折半するため、従業員が多いほど会社の負担も大きくなります。

また事務負担が増加するのも見逃せません。個人事業主と比べて、会社の事務は複雑です。税金関係や人事・総務など、質・量ともに負担が増大すると考えておきましょう。

会社が利益を確保した場合、あくまでそれは会社のものです。会社の社長であったとしても、口座から引き落として自由に使えません。1人社長であっても、同様なので注意しましょう。

個人事業主・フリーランスが会社設立すべきかどうかの判断基準とは

個人事業主・フリーランスが会社すべきかどうかの判断基準は、結局何になるのでしょうか。まずは設立した方がよいパターンから解説します。

会社設立に向いているのは、すでに十分な所得があり、事業拡大を望んでいる人です。

個人にかかる所得税より、法人税の方がお得になる所得の基準はおおよそ800万円です。年間所得が600万〜700万円に近づいてきたあたりで、一度会社設立を検討しておくとよいかもしれません。

また明確な事業のビジョンを持っており、今後さらに大きく展開していく予定であれば、会社設立をした方がよいでしょう。所得が大きくなればなるほど、税金の面で有利になります。さらに、社会的な信用力が上がることで、採用活動で人を集めやすくなるでしょう。

一方で会社設立によるメリットがあまり多くないのは、事業の拡大をそこまで考えておらず、自分のやりたいことを地道に続けていきたい人です。個人事業主として事業を続けるうえで、障害に感じる部分が特になければ、あえて会社を設立をする必要もないでしょう。

また所得があまり多くない人も、会社設立は避けておいた方が無難です。法人にかかる法人税率は、どれほど低くても15%になります。個人の所得税であれば、最も低い税率は5%なので、税負担を抑えやすいでしょう。

会社設立の流れ

会社設立の手続きは複雑なので、事前にある程度の知識を備えておくのが重要です。会社設立を考えている人に向けて、設立までのおおまかな流れを解説します。各手順での注意点にも触れますので、あわせてチェックしてください。

1.会社設立のための概要を決定

まずは会社設立のための概要を決定します。会社名や本店所在地、事業目的や資本金など、基礎情報を確定させましょう。

先ほども少し触れたように、現在の会社法には資本金の下限がないため、資本金1円から会社設立ができます。ただし事業の状態によっては、経営がままならなくなったり、社会的信用が得られなかったりするケースもあるので注意が必要です。

資本金は初期費用に加えランニングコスト3ヶ月分程度を目安に用意しておくとよいでしょう。

2.定款の作成および認証

次に定款の作成と認証を行います。定款は、会社の目的や組織内容についての基本規約・基本規則をまとめたものです。会社の規則の土台となる、非常に重要な要素となります。最近では電子定款も利用可能です。

定款が作成できたら、公証人役場で定款の認証を受けます。法務局によると必要書類は以下の通りです。

  • 定款3部
  • 3ヶ月以内に発行された印鑑登録証明書(発起人全員分)各1通
  • 実印(発起人全員分)
  • 認証手数料
  • 謄本代
  • 収入印紙
  • 委任状(代理人が申請する場合)

3.資本金の用意・払い込み

定款の認証が確定したら、その確定日以降に資本金の払い込みを行います。最初に会社の概要を決定し、資本金を確定させているため、その分の金額を用意しましょう。振込先は、発起人の銀行口座です。

資本金の払い込みをしたら、内容の明細コピーを作成しましょう。これは各発起人が間違いなく資本金を振り込んだことを証明するのに必要です。通帳がある場合は、表紙と表紙裏、振り込み内容が記帳されているページをコピーします。

インターネットバンキングを使っている場合は、必要な情報が記載されている箇所をプリントアウトします。銀行名や支店名、口座の名義、預金種別、口座番号に加えて、振り込み内容が記載されていることを確認しましょう。

なお、コピー用紙のサイズはA4サイズが一般的です。

4.登記申請書類の作成および申請

次に登記申請書類の作成と申請を行います。申請先は法務局です。特に書類に不備がなければ10日程度で申請が認められ、その申請日が会社設立日となります。法務局によると、株式会社の設立申請をオンラインで行う場合に、登記申請書以外に必要となる添付書類は、以下の通りです。

  • 定款
  • 発起人の同意書
  • 設立時取締役選任及び本店所在場所決議書
  • 設立時代表取締役を選定したことを証する書面
  • 設立時取締役の就任承諾書
  • 設立時代表取締役の就任承諾書
  • 払込みがあったことを証する書面

5.各役所への届出

登記の申請が認められたら、各役所への届け出を行いましょう。おおまかに税務署への届出、地方自治体への届出、年金事務所への届出の3つのステップに分かれています。

会社設立をしたら国に税金を納めなければならないため、そのための手続きを税務署で行います。また国だけでなく地方自治体にも税金を納めるため、同時に地方自治体への届け出も行いましょう。

また何度か触れているように、会社設立に際して社会保険に加入しなければなりません。1人社長の場合でも、必ず年金事務所への届出を行います。

6.法人口座の開設

届出が済んだら法人口座の開設を行います。会社名義の法人口座の開設は、個人の口座よりも審査が厳しくなる傾向にあるので注意しましょう。なお、法人口座の開設のためには、会社の登記簿謄本が必要です。事前に登記を済ませておきましょう。

法人口座の開設に必要な書類は以下の通りです。

  • 定款
  • 会社印
  • 代表者の印鑑証明書、実印、身分証明書
  • 会社資料(会社の概要などが載っているもの)

7.従業員の募集・採用

会社としての活動を始められる状態になったら、従業員の募集や採用を実施しましょう。1人で業務をこなせるのであれば、1人社長としてスタートします。「1人会社」「1人社長」という言葉がある通り、従業員がいなくても事業の開始・継続は可能です。

従業員の募集には、求人サイトに掲載してもらうなど、さまざまな方法があります。費用や時間もかかるので、事前に綿密な計画を立てておくのが重要です。自社のビジネス展開を考えつつ、適切な人材採用を行いましょう。

会社設立に際して相談できる専門家とは

会社設立は単独でも可能ですが、どうしても行き詰まる部分が出てきます。その際はさまざまな専門家に依頼し、手続きを代行してもらうとよいでしょう。ここでは会社設立に際して相談できる専門家として、税理士や司法書士、行政書士を紹介します。

税理士

税理士は財務や決算などの業務を行う専門家です。会社設立後に顧問になってもらうために、税理士に相談するケースもあります。会社社長に限らず、個人事業主でも税理士を利用している人は多いでしょう。顧問税理士を雇えば、煩雑な事務を代行してくれるため、経営に専念できるなどのメリットがあります。

また税理士は税金の専門家なので、結果的に優れた節税効果を実現してくれます。ただし、税理士に依頼すれば、もちろんコストがかかるので注意が必要です。目安としては、法人で月額3万5,000円、個人事業主で月額1万5,000〜3万円程度になります。

司法書士

司法書士は主に登記業務を得意としています。設立に関する業務を丸ごと依頼できるのはもちろん、税理士と顧問契約をしなくても会社設立が可能です。特に会社設立の手続きのなかでも、登記はとても難しいため、代行してもらえるだけでも負担を大きく減らせます。

司法書士に依頼するデメリットとしては、会社設立に関する専門家のなかでも、依頼料が割高になる傾向がある点です。また司法書士がカバーできるのはあくまで会社設立に関する範囲だけなので、会社設立後の税務関係の届出は、自分で済ませなければなりません。

行政書士

行政書士はその名前の通り、行政書類の作成や認可申請などの分野が得意です。業種にもよりますが、会社設立に関する行政書類作成は、手間と時間がかかります。行政書士を活用することによって、こうした書類作成を効率的に進められ、スムーズな会社設立が可能です。

ただし登記の分野を代行してもらうのは不可能なので注意しましょう。行政書士に限った話ではありませんが、専門家にはそれぞれの得意分野があります。専門外の作業は当然代行してもらえないので、「どの作業をどの専門家に代行してもらうか」を事前に考えておくとよいでしょう。

会社設立にかかる費用

会社設立にはさまざまな費用がかかります。そのため具体的にどれくらいの費用がかかるかを知っておくのはとても重要です。ここでは会社設立にかかる費用の種類や、費用を減らすための工夫、そしてオフィスを構える場合の費用感を解説します。

会社設立にかかる費用の種類

会社設立にかかる費用としては、法定費用や社会保険加入費用、オフィス家賃・備品、税金などです。

株式会社の場合、定款用収入印紙代が4万円、定款の認証手数料が5万円、謄本手数料が約2,000円です。また登録免許税は、15万円もしくは資本金の0.7%のうち、高い方の金額を支払います。

オフィス家賃は、どこにオフィスを構えるかで異なります。賃貸オフィスを扱う不動産仲介会社が紹介している相場を参照すると、仮に東京都中央区で考えた場合、30坪以下で1坪あたり1万7,545円、30坪から50坪で1万8,241円、50坪から100坪で1万8,553円です。

備品費用は、事業内容や規模にもよりますが、従業員1人あたり5万円から30万円程度です。税金としては法人税や法人住民税、法人事業税、消費税、固定資産税などの支払いが発生します。

会社設立にかかる費用を減らすためには

前提として、法定費用の削減はできません。しかし以下の工夫で、会社設立にかかる費用を抑えられることがあります。

  • 株式会社ではなく合同会社で設立する
  • 電子定款を利用する
  • なるべく自分の力で設立する

日本公証人連合ホームページ国税庁ホームページを参考に、株式会社にかかる費用と合同会社にかかる費用を比較すると、以下のようになります。

株式会社 合同会社
定款用収入印紙代 4万円(電子定款の場合は不要) 4万円(電子定款の場合は不要)
定款認証料金 3万〜5万円(資本金による) 定款認証は不要
登録免許税 15万または資本金の0.7% 6万円または資本金の0.7%

上記の表のように、合同会社で設立した場合は、定款認証料金がかからず登録免許税も安くなります。

また電子定款を利用すれば、紙の定款を作った際にかかる収入印紙代4万円を節約できます。そして専門家に依頼せず、なるべく自分の力で設立の作業を進めれば、手間はかかりますが依頼費用を抑えられるでしょう。

オフィスを構える場合の費用感は?

オフィスを構える場合の費用感が気になっている方も多いでしょう。依頼する業者やオプションによって大きく変わりますが、オフィスデザインのレイアウト設計費としては20万〜50万円ほどが相場です。ここに内装工事費(200万〜500万円)やネットワーク工事費(300万円前後)、施工管理費(10万~50万円)などが加わります

オフィスデザインのオプションは、オフィス家具・備品のレンタルや、インテリアコーディネートなどさまざまです。オプションを追加すれば、その分料金が上乗せされます。事前にどのようなオフィスを作るのか想定しておけば、業者とのすり合わせもスムーズに行くでしょう。

まとめ

本記事では、会社設立をテーマに、基礎知識からいくつかの法人形態とそれぞれの特徴、会社設立のメリットや注意点など幅広く解説してきました。会社設立にはいくつもの手続きが必要で、安定した事業運営を続けるには綿密な事前準備が必要です。「所得が何円を超えたら法人化を検討するか」「どのような法人形態で設立するのか」「何を専門家に依頼し、何を自分で行うか」「法人化するスケジュールをどうするか」など、1つひとつ計画を立てておきましょう。

株式会社が最もポピュラーではありますが、昨今では合同会社も選ばれています。少ない費用で設立でき、意思決定が早いなど、合同会社ならではのメリットも豊富です。

また、将来のビジョンと照らし合わせて、さまざまな方法で資金調達をし、より自分のビジネスを拡大していきたいのであれば、株式会社が向いているでしょう。一方、より自由度の高い経営を考えているのであれば、合同会社がおすすめです。

自分が思い描く将来像を掘り下げて、あとから後悔のない選択ができるよう、じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。