テレワークは働き方のニューノーマル 導入や見直しのポイントを全解説
新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、日本でもテレワークが一気に浸透しました。アフターコロナの動向が気になるところですが、株式会社ソウルウェアの調査では、現在テレワーク実施中の企業のうち実に9割が「テレワーク継続予定」と回答しており、その理由として「(テレワークに移行しても)業務に支障がないことがわかった」(59.1%)が最も多く挙げられています。
その一方、テレワークを経験したビジネスパーソンの6割がテレワークに対して何らかの不満を抱えていることも明らかになっています。
テレワークの課題としては、「オン/オフの切り替えが難しい(35.5%)」「オンライン会議がやりづらい(28.4%)」「生産性が下がった(24.1%)」「社内評価制度が未整備(19.9%)」「孤独を感じる(19.9%)」「やりがいを感じづらい(19.9%)」などの声が挙がっています。
これらを踏まえると、テレワークによる成果を実感するためには導入の目的を明確化し、その障壁となる課題を解消できるような仕組み・環境を構築していく必要があります。
本記事では、改めてテレワークの意義、メリットや課題、環境作りのコツなどについて網羅的に紹介していきます。自社に合った働き方を再定義するヒントになれば幸いです。
2.テレワークは働き方のニューノーマルへ
3.テレワークで使える助成金・補助金も
3-1.中小企業向け
3-2.都道府県ごとの取り組み
4.テレワークのメリット
4-1.①移動時間の削減・業務効率化
4-2.②ワークライフバランスの実現
4-3.③採用力向上:全国から優秀な人材の雇用が可能に
4-4.④オフィス維持費の削減
5.テレワークの課題
5-1.前提:目的・達成したいことを明確に
5-2.①コミュニケーションを円滑に
5-3.②在宅勤務環境を整えるためのサポート
5-4.③業務インフラ(固定電話、契約・請求業務のクラウド化)
5-5.④人事制度、マネジメント体制の整備
6.業務効率を上げる!オフィス環境作り
6-1.サテライトオフィスの利用
7.テレワークに必須!セキュリティ対策
7-1.ネットワークのセキュリティ対策
7-2.デバイスのセキュリティ対策
7-3.物理的なセキュリティ対策
8.テレワークの成功事例
9.まとめ
テレワークとは
総務省の定義によると、テレワークとは、「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」とされています。
テレワークといえば「在宅勤務」というイメージもありますが、モバイルワークやサテライトオフィス、ワーケションなども含みます。さまざまなメディアで使用される「リモートワーク」というワードも、テレワークとほとんど同義です。
テレワークの主な形態
在宅勤務 | 自宅を就業場所とする勤務形態 |
モバイルワーク | 時と場所を選ばない勤務形態 |
施設利用型勤務 | サテライトオフィスなどの施設を利用する勤務形態 |
テレワークの導入方法としては、「フルリモート」と「ハイブリッドワーク」の2種類があります。フルリモートは、その名前の通り、全ての業務をリモートワークに切り替える導入方法です。
一方、ハイブリッドワークは、オンライン上で完結する仕事をリモートにしつつ、部分的にオフィス出社を取り入れる方法です。ハイブリッドにすることで、対面で質の高いコミュニケーションを行う機会を確保しながら、実作業はテレワークによって効率化を図れるという利点があります。
テレワークは働き方のニューノーマルへ
先述の通り、新型コロナウイルス感染症拡大によって導入が進んだテレワークですが、それ以前にもテレワークの普及を推進しようとする動きがありました。2019年4月から順次施行が始まった働き方改革のなかでも、労働人口を増やし労働生産性を高めるための切り札としてテレワークが推奨されてきましたが、思うように浸透してこなかったのが実情でした。
その要因としては、日本において主流のメンバーシップ型雇用を前提とした働き方や、はんこ・紙を多用する業務のあり方を変えずにテレワークを適用させるのは困難であったことなどが考えられます。
そんな中で、新型コロナウイルス感染症が流行し、企業としてもその拡大を防ぐ対策を行うことが最重要課題と認識されるようになったことで、これまでのハードルを乗り越えてテレワークの導入に踏み切った企業がほとんどであったと言えるでしょう。
ロイターの調査でも、感染症対策として導入が進んだテレワークについて、現在実施中の企業のうち8割が感染が落ち着いた後でも「継続する」、「規模を縮小して継続する」と回答していますが、そのうち8割の企業がテレワーク継続の目的として「働き方改革」を挙げています。
テレワークで使える助成金・補助金も
テレワークの導入には設備やシステムを用意するための費用がかかりますが、そこで活用したいのが助成金・補助金です。ここでは主な種類を紹介します。
中小企業向け
テレワークで使える中小企業向けの助成金・補助金がいくつかあります。
テレワークを実現するためには、まず在宅勤務ができるような環境を整えなければなりません。PCの貸与や無線LANの設置など、さまざまな費用が発生します。そこで、中小企業向けの助成金を利用すれば、金銭的な負担を抑えながらテレワークを実現可能です。
例えば全国の中小企業が使える補助金として、「IT導入補助金 低感染リスク型ビジネス枠(特別枠C・D類型)」があります。支援機関への相談・審査を経てITツール導入費用の一部の補助を受けるものです。「特別枠C・D類型」は通常枠に比べて補助率が最大2/3に拡充されており、450万円までの補助が受けられます。
都道府県ごとの取り組み
中小企業向けの助成金・補助金を独自に用意している都道府県もあります。
- 東京都:テレワーク促進助成金
- 北海道:令和3年度テレワーク環境整備事業費補助金
- 神奈川県:令和3年度神奈川県テレワーク導入促進事業費補助金
いずれの助成金・補助金も、PCやITツールなどの導入費用が対象になっており、テレワークの導入時に便利です。テレワークの導入を検討している場合は、まず利用できる助成金・補助金がないかどうかを確認してみることをおすすめします。
テレワークのメリット
ここまで、テレワーク普及の背景概要や、利用できる補助金などを確認してきましたが、一番考えるべきポイントは「自社で今後継続・導入した場合にどのようなメリットが得られるのか」という点ではないでしょうか?
テレワークを実施している企業の社員を対象に行ったアンケートの結果から、従業員・企業双方にとってのメリットを考えてみましょう。
出典:KDDI「年齢層別に見るテレワークで実感しているメリット」
①移動時間の削減・業務効率化
テレワークの導入によって、移動時間を削減でき、業務に集中しやすい環境が整ったという声が最も多く挙げられました。
従業員をオフィスに通勤させる勤務形態であれば、どうしても移動時間が発生します。移動に時間的・肉体的な負担がかかるだけでなく、通勤ラッシュ時の満員電車での通勤はストレスの原因にもなり得ます。
また、企業にとっては通勤手当の支給の必要がなくなることで、コストの削減にも繋がります。厚生労働省の調査では、9割以上の企業が通勤手当として一ヶ月あたり平均11,462円の支給を行っているとされていますが、従業員一人あたり年間14万円近いコストが削減できるのは大きなメリットと言えるでしょう。
②ワークライフバランスの実現
次にテレワークのメリットとして挙げられているのは、ワークライフバランスの実現です。厚生労働省の定義によると、ワークライフバランスとは「生活と仕事の調和」を意味し、プライベートと仕事の時間がバランスよく配分されている状態を指します。テレワーク普及の推進力にもなっている「働き方改革」は、ワークライフバランスの実現を重要な課題の1つとして掲げています。
特に、育児や介護に携わっている従業員は、テレワーク導入によって在宅で勤務できる環境が整うことで、仕事と育児・介護の両立がしやすくなります。
会社が在宅勤務に対応していない場合、従業員は「会社を取るか、育児・介護を取るか」の二択を迫られた結果離職やテレワークを導入している他の企業に転職してしまう可能性もあります。
テレワークを導入し、在宅勤務ができる環境を整備しておけば、離職や他企業への流出を防げる可能性が高まるため、結果として採用コストや人材流出による損失を削減することに繋がります。
③採用力向上:全国から優秀な人材の雇用が可能に
テレワークの導入で、採用力が向上することも見逃せないメリットの1つです。特に全てをリモートに切り替える「フルリモート」を導入する場合、出社の必要が一切なくなるため、場所の制限を受けずに優秀な人材を採用できるようになります。
特筆すべき近年の動きとして、コロナ禍では、リモートワークの普及をきっかけに暮らしに対する価値観を見直す動きが生まれ、実際に2021年6月の移住者は昨年同月比で4.1倍にも上ったというデータがあります。
出典:Wantedly「月次移住者数の推移」
移住した人のうち、移住に伴って転職をしたと回答した人は半数を超え、その際に重視したこととしては「仕事のやりがい」や「自己成長性」が上位に挙がっています。
出典:Wantedly「転職先について重視したこと(3つ回答)」
このように、働くことの意義について深く考察し、高い向上心をもって仕事に臨むことができる優秀な人材を採用するためには、テレワークの制度を整えておくことが有利に働くと考えられるでしょう。
ちなみに、ここで転職せずに移住した層の過半数は、テレワーク導入企業だったという回答が得られているので、こうした優秀な人材の流出防止にもテレワークが影響していることが見て取れます。
また、採用力の向上は、遠隔地の人材の獲得だけに止まりません。テレワークを導入し、ワークライフバランスに配慮した職場環境を整えることで、遠隔地に限らず優秀な人材が集まりやすくなり、組織としての力が底上げされるでしょう。
特に、新卒採用においてはその傾向が顕著に見られ、学情の調査では企業の新卒採用にプレエントリーする際に過半数超が「テレワーク制度を重視する」と答えていました。
④オフィス維持費の削減
オフィスの維持費が削減できるのも、経営者にとってのテレワーク導入のメリットです。オフィスには、テナント料の他にもさまざまな維持費がかかります。特に従業員が快適に働くために必要な「オフィス家具代」「空調代」などは高額になりがちです。
テレワークを導入すれば、従業員の自宅が仕事場になるため、オフィスにかかる維持費を大きく節約できます。もちろん、従業員のPCやネットワーク環境など、会社が追加負担しなければならない項目もありますが、全体の維持費を考えれば、十分にメリットを感じられるケースがほとんどです。
ただし、テレワークと並行してオフィスを稼働し続ける「ハイブリッドワーク」を選ぶ場合は、「オフィスの維持費」に加えて「テレワークの費用」が二重に発生することになるので、運用方法には注意しましょう。
テレワークの課題
ここまでテレワークを実施するメリットを紹介してきましたが、場合によってはそのメリットを得にくいケースや、導入後に問題点が生じてくるケースもあります。ここでは、テレワークの導入を決める前に、検討しておく必要がある項目について確認していきましょう。
前提:目的・達成したいことを明確に
まず前提として、テレワーク導入にあたって重要なのは、目的や達成目標の明確化です。例えば「テレワークによって業務効率を改善すること」が目的の場合には、「具体的にどれくらいの労働生産性向上を見込んでいるのか」を明確にし、目標として設定するとよいでしょう。
テレワークを導入後は、定期的に効果計測をするのが大切です。「具体的にどれくらいの効果が出たか」「事前に設定した目標に届いているかどうか」などを確認し、もし思わしくない結果になった場合は原因を洗い出します。
目的や達成したいことを明確にしないままテレワークを導入すると、目立つ効果を得られないこともあります。テレワークの環境を構築するために少なくない費用がかかることを考えると、事前準備は重要だといえるでしょう。
それでは次に、テレワークを実施した際に生じやすい問題点について見ていきましょう。
テレワークをしている従業員を対象にした「テレワークの悩み」に関する調査では、
次のような課題が挙げられていました。
出典:KDDI「年齢層別に見るテレワークを実施する上で不便に感じていること(仕事面)」
出典:KDDI「年齢層別に見るテレワークを実施する上で不便に感じていること(生活面)」
仕事面・生活面の両面において、これまでのオフィス勤務時とは大きく環境が変わったことによる心身のストレスや環境の未整備などが主な課題になっていることがわかります。
これらの課題を解消するためにクリアすべきポイントを考えてみましょう。
①コミュニケーションを円滑に
テレワークの課題感として、半数近くの人が挙げていたのが、コミュニケーションが取りにくいことでした。在宅勤務に慣れないままテレワークを導入すると、どうしてもコミュニケーション不足によって孤独感を感じる従業員も多く、特に新卒の若手社員や採用側の人事担当者で心理的負担が高くなるようです。
新卒若手 | 人事担当者 | |
孤独や不安など精神的な負担 | 約35% | 約70% |
職場の人間関係の情報不足 | 約45% | 約75% |
仕事内容の情報不足 | 約45% | 約70% |
グループワークなど体感習得の難しさ | 約50% | 約75% |
出典:パーソル総合研究所「在宅勤務が新卒若手に与えた影響」
同僚や上司・部下との会話は、業務の質や従業員のモチベーションにもつながる重要な要素です。テレワークを導入する際は、コミュニケーションを維持する施策も想定しておくとよいでしょう。
また、リクルートキャリアの調査では、年代が高いほどテレワークのストレスを解消しにくい傾向があることも示唆されているため、特にこまめなケアが必要になるかもしれません。
コミュニケーションを円滑にするための工夫としては、以下のようなものがあります。
- 雑談など会話を増やすための工夫
- 会社への帰属意識や一体感を感じてもらうための工夫
- 新入社員に早く馴染んでもらうための工夫
具体的には、定期的に従業員全員が参加するオンラインミーティングを設けて同じ会社で働く仲間としての一体感を強めたり、新しいメンバーが入ってきたタイミングでオンラインでもチームの仲間が集まるランチ会を企画することなどが考えられます。
チャットツールの中に、気軽に雑談や質問ができる場をつくっておくのも良いでしょう。
②在宅勤務環境を整えるためのサポート
他には、ネットワークやデスク・チェアなど在宅勤務環境が整っていないことに関する課題が多く挙げられています。快適な在宅勤務環境を整えることは、業務の生産性に直結するため、企業側が環境作りのサポートをすることが大切です。
月刊総務オンラインの調査によれば、テレワーク手当を実施している企業のうち、テレワークに伴う手当を支給している企業は32.8%と全体の3割ほどにとどまる結果でした。
ハタラクティブの調査では、現在テレワークに不満を持っている人が企業に求める制度やサポートとして、「ツール類の導入」(45.5%)に次いで「在宅勤務手当の支給」(39.0%)が多く挙げられていることから、快適な在宅勤務環境を整えるための補助が求められていることがわかります。
③業務インフラ(固定電話、契約・請求業務のクラウド化)
テレワークを成功させるためには、固定電話や契約・請求業務ツールといった業務インフラも見直す必要があります。
テレワークを導入したにもかかわらず、契約書や請求書の作成・管理を紙ベースで行っていると、そのためだけに出社が必要になったり、必要な捺印や決済が滞ったりするなど運用が不便になります。契約書は電子契約に切り替えて、請求書もWeb請求書システムなどを導入するとよいでしょう。
また、オフィスに出社する従業員が大幅に減った場合、固定電話の使用頻度が大きく下がります。社外からの電話応対に支障が出ると、ビジネスにも大きく影響してくるため、固定電話はクラウドPBXにするなどの対応をし、テレワーク時でも不便がないように準備しておきましょう。
「業務インフラがテレワークに対応しているかどうか」は、テレワークにおける生産性や従業員のモチベーションを左右する重要な要素です。この機会に、業務フローの見直しを行い、積極的にクラウドツールなどを活用して効率化を図ってはいかがでしょうか?
④人事制度、マネジメント体制の整備
テレワーク導入後は、人事制度の運用やマネジメント体制の見直しも必要になります。エン・ジャパンの調査では、「テレワーク導入の上で難しかったこと」として「テレワーク社員の時間管理」「テレワークの利用条件設定」「テレワーク時の業務ルールの設定」と答えている人が半数以上に上り、勤務形態の変化に合わせて人事制度の変革を迫られた企業が多かったことが見て取れます。
また、マネジメントに関する課題として、「テレワーク社員への指導・業績評価」(39%)「テレワーク社員への理解(職場風土の醸成)」(34%)に困難を感じた企業も多かったようです。ただでさえコミュニケーションが不足しがちなテレワーク環境で、従業員の立場では「人事部門や上司は本当に自分を評価してくれているのだろうか?」と不安になりやすい一方で、上司にとっても、部下の仕事のプロセスを把握しにくく、適正な評価をすることが難しくなります。
では、テレワークに適した勤怠制度や運用ルール、マネジメント体制を構築するためには、どのような工夫をすればよいのでしょうか?
テレワークを導入する場合、合わせて「クラウド型勤怠管理システム」を導入するとよいでしょう。PCやタブレット、スマートフォンのようなデバイスから打刻ができるため、オフィスから離れていても安心です。
GPS連携や指紋認証など、従業員の虚偽申告を防ぐための仕組みも整っているため、より正確な打刻が期待できます。また新しい機器を用意する必要がないため、場所に関係なく低コストで運用でき、なおかつ蓄積したデータの紐付けも可能です。
・テレワークの運用ルール
テレワークを運用する際は、従業員に不公平感を抱かせないよう、明確な運用ルールを決めるとよいでしょう。「誰がテレワークの対象になるのか」というテレワークの実施範囲はもちろん、「テレワークを行いたい際に誰に申請すればよいのか」という申請方法・承認方法などを決定します。
事前にルールを定めておくことで、従業員からの不安や不満を解消し、円滑にテレワークを導入できます。総務省が公開しているチェックリストなど、さまざまな資料を参考に、分かりやすいルール作りを心がけましょう。
・テレワークに適した評価制度、マネジメント体制
テレワーク環境で従業員の働きを評価するためには、プロセス管理に固執するのではなく、成果主義を取り入れるとよいでしょう。自社全体の目標を部署単位・個人単位でブレイクダウンし、各従業員のミッションを明確にした上で個人目標を設定、達成度に応じて評価をします。代表的な評価手法にはOKRなどが挙げられます。
OKR | 目標と主要な結果 |
KPI | 目標の達成度合いを測るために用いられる定量的な指標 |
一方で、明確に個人の業務範囲が定まらない場合には、ボトムアップで個人目標を立てる「MBO」や、「バリュー評価」も織り交ぜながら制度設計することもできます。
MBO(ボトムアップ型) | 従業員に自己の目標をボトムアップで設定させる手法 |
バリュー評価 | 各従業員がどれだけバリュー(価値)を発揮できたか相対的に評価する手法 |
また、テレワーク導入後は、評価制度の設計に加えて、「どのようにマネジメントしていくか」も重要です。1on1で定期的にフィードバックをするなど、出社時以上に従業員のモチベーションを管理する工夫が必要です。
・1on1
1on1は文字通り、上司と部下の一対一で行うミーティングです。1on1を行う際は、以下のフローを意識すると効率的に進みます。
- 1on1に適した話しやすい場所を用意
- 部下の本音を引き出せるようにフランクな雰囲気を作る
- アジェンダは上司が決めるのではなく、部下が話したいことを持ち込むようにする
- 1on1の内容を記録し、振り返りができるようにする
1on1を上手く活用すれば、部下との信頼関係の構築や、部下のモチベーション維持・向上などさまざまな効果が期待できます。
ここまでテレワークについてさまざまな角度から検討してきましたが、メリットが大きい反面、デメリットを解消する努力や工夫を必要とする場面も多くなることが想定されるため、「自社ではテレワークの導入に向かない可能性が高い、必要性が薄い」「フルリモートではなく、業務内容によってはオフィス勤務も織り交ぜながらテレワークを実施したい」と考えた方もいたのではないかと思います。
実際に、テレワーク未導入の企業を対象にしたワークスモバイルジャパンの調査でも、テレワークを導入しない理由として「リモートワークができない業務をしているから」と回答した企業が7割を占めており、業務上出社せざるを得ないケースも少なくないことがわかります。
このように、テレワークの導入が難しい場合でも、オフィス環境の工夫次第で業務生産性や従業員エンゲージメントを向上させることが可能です。
業務効率を上げる!オフィス環境作り
部分的にテレワークを導入するハイブリッドワークであれば、オフィス環境を快適にすることも大切です。業務内容や、目的に応じた空間を作るのがよいでしょう。オフィス環境を整えるための取り組みとしては、以下のようなものがあります。
- フリーアドレス
- オフィスカフェ
- ミーティングスペース
- 集中スペース
フリーアドレスとは、個人の座席を固定せず、仕事場所を自由に選べるスタイルです。スペースを節約できるだけでなく、部署や部門を超えた交流など、多くの効果が期待できます。
オフィスカフェスペースは、文字通り「オフィスに設けるカフェスペース」です。フリーアドレスと同様、従業員同士のコミュニケーションの促進や、リフレッシュ効果につながります。
ミーティングスペースも自社に合ったコミュニケーション設計において重要です。ミーティングスペースには、以下のようにさまざまなレイアウトがあります。シチュエーションに合わせて、レイアウトを変えてみるとよいでしょう。
- 対面型:顔を合わせての意見交換に最適
- 島型:グループワークなどに最適
- コの字型:プレゼンや企画会議向け
- ロの字型:緊張感の必要な会議向け
- スクール型:セミナーや研修向け
- シアター型:入社式やパネルディスカッション向け
集中スペースも、ミーティングスペースと同様、目的に応じて空間設計をすることが大切です。個人ワークに集中したい場合やWeb会議・電話商談などが主な目的になる場合には、完全個室であるクローズタイプがおすすめです。防音性や有線LANが使えるかどうかなど、製品によってデザインやスペックもさまざまなので、実際の利用シーンをよく考えて検討しましょう。より低コストでブースを設置したい場合は、天井などが空いているセミクローズタイプもあります。
他にも、簡易的な仕切りだけで気軽に利用できるオープンタイプや、デスク上に仕切りを立てる卓上タイプがあります。オフィスのデッドスペースにブースを作るのも有効です。会社や部署の目的に合わせて、最適な集中スペースを設置しましょう。
サテライトオフィスの利用
テレワークと併用してサテライトオフィスを使うのもよいでしょう。サテライトオフィスは、本拠地である本社オフィスや支社・営業所とは別のオフィスを指します。自宅やカフェなど場所にとらわれず仕事をするテレワークとは異なり、会社側が用意するオフィスで仕事をしてもらう働き方です。
自宅やカフェで仕事をするには、先述のようにコミュニケーションや業務インフラなどいくつかの課題があります。サテライトオフィスを導入することで、上記のようなテレワークのデメリットを解消でき、業務効率の改善に役立てられる他、従業員にとって「働く場所の選択肢が広がる」のも大きなポイントです。
テレワークに必須!セキュリティ対策
テレワーク導入の際に注意しておきたいのがセキュリティ対策です。従業員が全員オフィスに出社するのであれば、オフィス内でセキュリティ対策が完結しますが、テレワークの場合は、さまざまな環境で業務が行われることを想定した対策が必要です。
セキュリティ対策を怠ってしまうと、不正アクセスや情報漏洩などの情報インシデントにつながる危険性もあります。ここではテレワーク導入時にチェックしたいセキュリティ対策を解説します。
ネットワークのセキュリティ対策
ネットワークのセキュリティ対策として重要なのは、従業員に安全なネットワークの使用を徹底させることです。一部のネットワークのセキュリティに脆弱性があれば、そこから悪意あるソフトウェアによる攻撃を受ける可能性があります。
意識しておきたいのは、プライベート・ネットワークを用意すること、そしてその使用をルール化することです。また必要があればモバイルルーターを支給し、公衆Wi-Fi(特にパスワードがないもの)を使わせないようにしましょう。
デバイスのセキュリティ対策
デバイスのセキュリティ対策として意識したいのが、ネットワークのウイルス対策です。テレワークを取り入れる場合は、ウイルス対策ソフトの導入が必須となります。悪意あるソフトウェアの攻撃を防ぐために、必ず準備しておきましょう。
WindowsのPCは、特に狙われやすいデバイスなので注意が必要です。OSやソフトウェアは頻繁にアップデートを行い、簡単なIDやパスワードを使い回さないように周知を徹底しましょう。多段階認証など、セキュリティに優れた認証方法を利用するのも有効です。
物理的なセキュリティ対策
最後に物理的なセキュリティ対策について解説します。例えば従業員の作業スペースにセキュリティ対策を施すよう、誓約書を交わすなどの取り組みも1つの手です。作業スペースの出入りを管理させ、従業員のデバイスなどが持ち出されないようにしましょう。
重要なデータの入ったUSBメモリや書類の紛失にも注意しなければなりません。持ち出しルールを設定し、クラウド上でのやりとりやペーパーレス化を推進するのが望ましいでしょう。
テレワークの成功事例
最後にテレワークの成功事例を紹介します。
日本取引所グループは、2016年度にテレワークのトライアルを実施し、120名がハイブリッドワークとなりました。管理職・非管理職から「生産性が向上した」という声があり、実際に月平均残業時間が10%以上減少するなどの効果が出ています。
積⽔ハウスは、2017年にテレワークを制度化し、以降本格的な運用を行っています。同社が特徴的なのは、在宅勤務が必要かどうかを検討するイベント「テレワーク・デイ」です。サテライトオフィスやモバイルワークなどを導入し、参加者の約9割がテレワークの継続を希望しました。
向洋電機⼟⽊株式会社は、テレワークの効果を従業員に実感してもらうために、さまざまな数値データの可視化を行いました。テレワークの結果として、ガソリン使用量や本社電力使用量、平均労働時間が抑えられています。また大阪を拠点としながら、北海道や沖縄など地方人材の採用実績を作りました。
株式会社⽯井事務機センター(現:株式会社 WORK SMILE LABO)は、2016年から内勤メンバーへのテレワークを導入しています。2017年には外勤メンバーを含めて、全社員へのテレワーク導入が完了しました。2017年には、残業51.8%減、売り上げ106.7%、粗利117.6%(前年比)を達成しています。
まとめ
今回の記事では、テレワークについて幅広く解説しました。
テレワークは目的ではなく、目標を達成するための手段です。何となくテレワークを導入するのではなく、目的・達成したいことを明確化するようにしましょう。そして仕組みを作るだけでなく、コミュニケーション円滑化や従業員のモチベーション維持など、目に見えにくい課題を解決するための工夫も必要です。
昨今ではテレワークが広く普及しており、メリットやデメリットも具体的に検証しやすくなっています。貴社にとってベストな働き方を、もう一度見直してみてはいかがでしょうか?