ビジネスに必須のコミュニケーションスキルを解説!3つのスキルと高める方法、陥りがちな失敗とは
人が社会で生きる限り、誰ともコミュニケーションを取らないことはありえないでしょう。量や質はさておき、ビジネスにおいてもコミュニケーションが必須であることは疑いようがありません。
このコラムでは、コミュニケーションスキルについて改めて深く向き合うために、「なぜコミュニケーションスキルが必要なのか」を考え、具体的な3つのスキルに分解し、実践方法と陥りがちな失敗について解説します。
コミュニケーションは抽象的な概念ではありますが、ビジネスにおいては特に重要なものです。しかし、一朝一夕で身に付くものではありません。だからこそ、本記事を何度もご覧いただき、日々の仕事に役立てていただけると幸いです。
2.「話が上手い」「外交的」=コミュニケーション上手ではない
3.コミュニケーションで意識したい2つの大原則
4.コミュニケーションに求められる3つのスキルと高め方
4-1.信頼関係を作るスキル
4-2.相手の話を聞くスキル
4-3.こちらの話を伝えるスキル
5.コミュニケーションで気付かないうちに陥りがちな失敗
5-1.ケース1:自分の考えありきで答えを決めつけてしまう
5-2.ケース2:自分が話してばかりで相手から話を引き出せない
5-3.ケース3:相手を委縮させてしまう
6.まとめ
コミュニケーションスキルがなぜ重要か
ビジネスにおいてコミュニケーションスキルが重要視されるのは、「人・組織を適切な方向に動かすために必須であるから」にほかなりません。
- 1.相手の状況や意見を理解する
- 2.相手に自分の状況や意見を理解してもらう
- 3.認識や目的をすり合わせる
ビジネスではこの3要素のうち1つでも欠ければ手戻りやミスが発生し、場合によっては取り返しができない致命的な状況になる可能性があります。一方、これらのコミュニケーションに関するスキルはVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の頭文字から成り、将来を予測するのが難しいことを意味する略語)の時代において希少かつ市場価値の高いものであり、人を巻き込んで事業を進められることは大きなアドバンテージとなります。
「話が上手い」「外交的」=コミュニケーション上手ではない
いわゆるプライベートな場では、「人を惹きつける話術」や「気の利いた発言ができる」といった「発信型」のスキルが「コミュニケーション上手」と捉えられがちです。
これらの発信スキルは、あるに越したことはないでしょう。しかし、各々が互いの専門性を持ち寄って事業を進めるビジネスにおいては、相手から知識や情報を受け取り、加えてこちらからも伝える「双方向」のコミュニケーションが最も重視すべきものとなります。
コミュニケーションで意識したい2つの大原則
ここからは、コミュニケーションの実践的なスキルを3つ解説します。ただしその前に、2つの大原則を念頭においてください。
- 1.「伝わらないのは自分の責任」という認識を持つ
- 2.理解されたければ、理解に努める
「1」はまず、自分が伝えたいことが伝わらず、「なぜ相手はこちらの言っていることが分からないのか」と考えてしまう際に意識したいことです。話が伝わらないのは、自分が相手の抱える文脈やリテラシーを正しく認識していないことが原因であり、必ずしも相手のせいではありません。
「2」についても、1を念頭に置きながら、自分の考えややりたいことといった内容を理解してもらうために、まずは相手の考えややりたいことを意識することが求められます。相手が「こちらの話を聞いてくれる・理解してくれる」と思ってもらってはじめて、こちらの話に耳を傾けてくれるようになります。
コミュニケーションに求められる3つのスキルと高め方
双方向のコミュニケーションでは、「相手から信頼される」ことと、「相手の話を受け取り」つつ「自分の発言を正確に伝える」スキルが重要です。ここからは「コミュニケーション」を具体的な3つのスキルに分解し、それぞれのスキルを身に付けるために何をすべきかを細かく解説します。
信頼関係を作るスキル
「信頼」とは相手を高く評価し、重要なことを任せられると考えている状態のことです。言い換えれば、人が人に対して次のように考えている状態ともいえるでしょう。
- 情報や気持ちを積極的に開示しようと思っている
- 相手の言動を基本的に正しいと思っている
- 相手に対し自らの労力を使おうと思っている
信頼関係の構築はビジネスにおけるコミュニケーションの基本中の基本ですが、たやすく手に入るものではありません。次のような「姿勢」や「態度」を心がけ、長期的に育む必要があります。
1.相手と交わした約束を守る
時間や納期、担当する作業など、相手との約束を守ることで信頼感が生まれます。
2.相手の労力や行動、思想を尊重し、ないがしろにしない
相手の話を聞く時には、目を見たり相槌を打ったりして「相手にきちんと向き合っていること」が伝わるように示しましょう。
3.できる範囲で、相手の行為に報いる姿勢を持っている
相手から受ける行為に対して、等価値またはそれ以上の価値を返す姿勢を忘れてはいけません。
4.まず「自らが与える」姿勢を持つ
「相手に報いる」の発展系であり、実現には困難が伴いますが、この姿勢を追求して実践することが理想です。
つまり自分を理解してもらうためには、それ以上に相手のことを理解し信頼する姿勢が重要になってきます。相手の状況や考え方を尊重することは、人格そのものを尊重することにもつながり、相互理解への道を開く秘訣でもあるのです。
相手の話を聞くスキル
相手の話を聞くためには、まずは相手の「言語情報」および「非言語情報」を理解し、それらを「情報・事実」と「考え・感情」に分ける必要があります。コーチングにおける「アクティブリスニング」という技法では、相手の話を聞くことに対して4つのレベルが設けられています。
- 1.相手の言っていることを聞く
- 2.相手の言わんとすることを聞く
- 3.相手が言っていないことまで聞く
- 4.相手が自分自身でも気付いていないことを聞く
相手の発信する情報を分解し、まずは「何」を「どのように」聞くかを考えましょう。
「言語情報」を引き出し、読み解くスキル
言語情報では、文字通り「相手が話している内容そのもの」が焦点となります。ここでの大前提は、「5W1H」に落とし込んで把握すること。情報を受け取り、相手との認識を合わせるためには、次のような方法で話を進めるとスムーズです。
- 目線を適切に合わせ、相手が話す速度や呼吸にペースを合わせる
- 相づちを打ち、「それで?」といった言葉をかけ相手の話を進める
- 相手の発言を繰り返し、「伝わっている」という感覚を与える
そのうえで話を聞きながら適宜相手の話を要約し、お互いの理解を確認しましょう。
「非言語情報」を読み解くスキル
非言語情報とは、声の調子や身ぶり手ぶり、目線といった言語外の情報のことです。例えば声のトーンが低く淡々としていれば「無関心」や「深い思考」、反対に声が大きく抑揚があれば「高揚」や「意欲」を表していることが多く、相手の心境を理解するのに役立ちます。
とはいえ、あくまでもよくあるパターンというだけであることは忘れてはいけません。「相手がこのようなそぶりを見せているから、こういった感情を持っている」と決めてかかれば、すれ違いを生む原因になりかねません。重要なのは相手の状況や態度をしっかりと観察し、推測の精度を高めていくことです。
非言語情報を読み解く力は「人生経験」にも近いものですが、相手を理解する気持ちを忘れず、実践することでスキルを高められます。
相手の伝えたいことを「情報・事実」と「考え・感情」に分解する
言語情報と非言語情報を受け取ったら、それらが「情報・事実」なのか、それとも相手の「考え・感情」なのかを分類する必要があります。
「情報・事実」であれば、5W1Hのいずれまたは全てに当てはまるため、互いの認識が間違わないように注意しましょう。例えば会議においても「いつまでにやるのか」「何をどこまでやるのか」はうやむやになりがちなことであり、気を付けるに越したことはありません。
「考え・感情」については、どのような事実に基づいて現状に至ったかを端的に理解することが求められます。この場合も、言語情報を引き出すスキルと同様に、「相手の話を要約して理解を確認する」作業が有効です。
こちらの話を伝えるスキル
信頼関係を築いて相手の話を正確に聞けるようになれば、そこで初めて自分の話を正確に伝えられるようになります。コミュニケーションの目的は、「話や感情に共感する」「事実を確認する」「自分の考えや意見を伝える」「相手に動いてもらい何かを得る」の4つであり、聞く力だけでなく伝える力も磨かなくてはなりません。
「共感」を伝えるスキル
共感とは、相手の喜怒哀楽を受け取って寄り添うことです。ビジネスの現場においても、相手の感情を尊重することで、より深い信頼を得ることができます。共感を示す具体的な方法は主に2つです。
- 1.「辛かったんですね」「うれしかったんですね」など、相手の感情を言語化する
- 2.相手が怒っていれば怒り、喜んでいれば喜ぶなど、相手の感情を追体験するように努める
相手の感情が理解できないケースもありますが、その場合は「理解しようと努めている」ことを示しましょう。共感力を高めるには、「相手に興味を持つ」「苦手な人とも話をしてみる」といった方法もありますが、前述した「話を聞くスキル」を高める過程で自然に向上していきます。
「事実」「意見」を伝えるスキル
事実や意見を正しく伝えるためには、「話を聞くスキル」の段落で示した「5W1H」に落とし込む技術、双方の理解を確認する技術を活用します。
ただし自分の意見を伝える際には、頭ごなしに相手の考えや話を否定してはいけません。
「そちらの意見としては●●ということですが、私は○○と考えます。その理由は……」のように、相手の意見を受け入れている姿勢を意識することで、もし意見がぶつかったとしても反感を買う可能性を減らせます。
また、話を聞く際も「否定しないこと」や「相手の言葉を繰り返すこと」ばかりに集中すると、話を聞いていないことが相手に伝わってしまうことが少なくありません。事実や意見を伝えるスキルは、相手の話を遮らず、なおかつ曲解せずに聞くスキルと深くかかわっているのです。
「交渉」をするスキル
交渉を行う目的は、双方から資金や労働力といったリソースを引き出し、そのうえでどちらにとってもメリットがある状態、つまり「Win-Win」の関係を作り出すことにあります。相手が損をする「Win-Lose」や自分が損をする「Lose-Win」では、やがて関係が破綻してしまうでしょう。そのためには、次のポイントを意識します。
- 1.自分の意見を分かりやすく筋道立てて話す
- 2.感情的にならない
- 3.相手の意図や状況に配慮する
- 4.互いが求めていることを洗い出し、整理する
コミュニケーションで気付かないうちに陥りがちな失敗
ここまでの解説について、「当たり前のことだ」と感じた人も多いのではないでしょうか。しかし実際には、コミュニケーションの失敗に起因するビジネスの失敗というのは枚挙にいとまがなく、実際に正しいコミュニケーションを実践するのには困難が付きまといます。ここでは自分では気付かないうちにやってしまいがちな失敗について解説します。
ケース1:自分の考えありきで答えを決めつけてしまう
相手の話を聞く際に、冒頭から「自分の考えが正しい」「相手の意見は間違っている」と決めつけてかかってしまうと、コミュニケーションは失敗します。「話を聞いてくれていない」と思わせてしまえば、相手は心を閉ざしてしまいかねません。
ビジネスは即答を求められるシーンが多く、余裕がなくなると相手の意見に耳を貸せなくなることが多いのではないでしょうか。そんな時にこそ、聞く姿勢を忘れないようにすべきです。また、よかれと思って自分の経験や考えを相手に教えようとすることもありますが、相手がそれを求めているかどうかも慎重に判断しなくてはなりません。
ケース2:自分が話してばかりで相手から話を引き出せない
いわゆる「話し上手」で「外交的」な人にありがちなことですが、自分が一方的に話をしてしまった結果、相手から意見や情報を引き出せないことがあります。会話中にお互いが話す割合としては「5対5程度」が望ましいですが、「話しすぎ」も「話さなすぎ」も好ましくありません。
言い換えると、本当の意味でのコミュニケーション上手とは、相手から話を引き出せる人、つまり相手が「いつの間にかたくさんしゃべっていた」という状態を作れる人なのかもしれません。会話の際は、自分と相手の話す割合を意識しましょう。
ケース3:相手を委縮させてしまう
マネージャー・上司や先輩にあたる人がやりがちなのが、無意識に威圧感を与えて萎縮させてしまうという失敗です。こうなってしまうと、相手に結論や意見を求めてもこちらの顔色をうかがうようなものしか出てこず、正確な情報を得られません。
忙しかったり、誰かがミスをしたりというイレギュラーな状態ではつい強い口調になりがちですが、そんな時こそ相手を責めずに話を聞き取るように意識することが大切です。
まとめ
コミュニケーションスキルとは小手先の技術ではなく、姿勢や態度、相手を尊重する気持ちといったその人の「生き方」が出るものです。そのため、すぐに身に付けたり改善したりできないものと考え、継続的に向上に努めることを意識しましょう。
このコラムではテクニカルなコミュニケーションスキルにも触れましたが、ビジネス上のコミュニケーションで最も重要なのは次の3点です。
- 相手を尊重する気持ち
- 相手を理解しようと努める気持ち
- その上で「Win-Win」の結論に導くこと
常に人を観察し、相手が何を求めているか、どうすれば心を開いてくれるかを考えながら実践することが重要です。