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マネジメントとは?やるべきこと、スキル、フレームワーク、やるべきでないこと

マネジメント

起業した経営者や大企業の社長、小さなチームを管理する方まで、大小関わらず組織を運営する場合、多くの人はマネジメントの壁に突き当たります。ほとんどは組織づくりに関するものであり、部下や業務をどのように管理していくか、チームや組織のメンバーを束ねていく方法を見いだせなくなります。

この記事では、起業家やマネージャーをはじめとするこれからマネジメントに向き合う方、改めてマネジメントについて考えていみたい方に向けて、マネジメントとは何か、その方法論、やるべきではないことをお伝えし、マネジメントを行う上で明日から活かせるスキルやマインドについてご説明します。

これからマネジメントを行う方にとってよりどころとなる記事となれば幸いです。

マネジメントとは何か、なぜ必要か

「マネジメントとは何か?」その答えは、経営者やマネージャーの数だけあるのではないでしょうか。それが何を示しているかというと、それぞれが行う事業と作った組織、何よりも経営者やマネージャー個人の考え方によって最良のマネジメントは異なるということです。

失敗を繰り返し、試行錯誤しながら手に入れたものであるからこそ、それぞれのマネジメントのあり方につながっています。

一方、マネジメント経験が浅い人は、マネジメントをする意識が薄い、つまり、目標設定やフィードバックの重要性が認識できなくなりがちです。

起業したての経営者、新任のマネージャーにとって、マネジメントは全体をつかみきれない漠然としたものであるかもしれません。まず最初に経営分野の教科書的な基本からマネジメントを学んでいきましょう。

ドラッカーの提唱するマネジメントの定義

マネジメントを語るうえで、最初にあげなければならないのが米経営学者、P.F.ドラッカーの示すマネジメントです。

アメリカで巨大組織を持つ企業が現れた20世紀初頭、それまで統制されていなかった組織管理の問題について、ドラッカーは著書『マネジメント』のなかで明確な定義を与えました。

ドラッカーはマネジメントとマネージャーについて以下のように定義しています。

・マネジメント:「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」

・マネージャー:「組織の成果に責任を持つ者」

1900年代から企業のマネジメントを対象とする数多くの学術研究が「経営管理論」として進められてきました。そのなかでもドラッカーの定義は、経営に関するコンセプトとして今も通じる考え方です。

マネジメントがなぜ必要か

「マネジメントがなぜ必要か?」この答えとしては、「より大きな事を成し遂げるため」ということができます。

一人でできることには限界があり、複数の人で組織を作り協力して同じ目的に向かうことで、一人では達成できない、より大きな目標にたどり着ける可能性が生まれます。そして、マネジメントを行うにあたっては組織の「目標設定」、人材のアサインといった「組織設計」、メンバーや部下の「動機付け」や「能力開発」が求められ、いずれも事業を行う上で必須のものとなるでしょう。

例えば、起業して事業を新たに始める方にとって組織とは会社のことです。そして、向かう同じ目的、成し遂げるべきことが会社のビジョンでありミッションです。

ビジョンとミッションを組織のメンバーに示し、達成に向けての具体的な道筋(バリュー)を決めていくことがマネージャーの役割です。

マネジメントに必要となる考え方

目的を達成するためには具体的な目標が必要です。会社に置き換えれば、自分の会社が提供できる価値を、誰に、どうやって届けるかを明確にすること。さらに、提供し続けるためにどの程度の利益を生みだすか、これらすべてが目標となります。

組織をマネジメントすることは、目標を設計し、それをどうやって効率的に達成するかを考え続けることにほかなりません。

ドラッカーの定義で見たとおり、マネジメントが対象としているのは組織であり、組織は人で構成されています。

組織が集団と異なるのは共有する目的があるかどうかという点です。集団を組織としてメンテナンスしていくことは簡単なことではありません。

簡単ではないからこそ、経営者やマネージャーは考え続けなければならないし、マネジメントに正解はないといわれる所以であるといえます。

マネジメントでやること、求められるスキル、フレームワーク

組織が特定の目的を持って存在する以上、すべての組織にはそれぞれのやり方でマネジメントされています。

何をすることがマネジメントなのかをご紹介するとともに、それに求められるスキルや活用できる考え方としてのフレームワークについて解説します。

マネジメントでやること

マネジメントの具体的な内容についても、ドラッカーはマネージャーに共通する仕事として次の5つの要素をあげています。

いずれも「人を動かすこと」に関わることで、相手の話を受け止める傾聴力、交渉力といったコミュニケーションスキルが求められます。大小問わずあらゆる組織・あらゆる時代に求められるマネジメントの基本と言えるでしょう。

目標設計

すべての企業にとって自明の目標となるのが収益に関するものです。収益をあげられなければ、事業を継続することができないのは当然のことであり、売上や利益、そしてコストがマネジメントの最優先事項であることはいうまでもありません。

利益は売上からコスト(費用)を差し引いたものであり、利益を増やすためには売上を増やすことと費用を減らすことの両面からアプローチすることになります。

収益に関する目標設定の具体的な例としては以下のようなものがあげられます。

例1)売上増加のためにチャーンレート(解約率)を◯%低減させる

例2)売上増加のために営業商談件数を◯%増やす

例3)マーケティング・営業コスト低下のためにMA(Marketing Automation)を導入する

例4)バックオフィスの労務コスト削減のため、経費処理にワークフロー・RPA(Robotics Process Automation)を導入する

このような問題に対し正しい目標を設定するためには、経営と事業の現状と課題を把握することが必要であり、イシューツリー等を用いたロジカルシンキングやクリティカルシンキングを取り入れることが有効です。

また、目標の実現可能性を測定する方法としてSMARTというフレームワークがあります。SMARTについては後述します。

動機づけ

動機づけは組織のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を組織のメンバーと共有するための継続的な働きかけを指します。

個々のメンバーのパフォーマンスを最大化させるために、ゴールに向かうモチベーションを高めるための仕組みや環境、組織風土を作っていくことがマネジメントの具体的な内容です。

パフォーマンスは目標に対する「方向性」と「深さ」に分解することができ、適切な「ゴール」と「動機づけ」を行うことで方向性と深さが決まります。

人を相手とする動機づけにはコーチングのスキルが大きく役立ちます。

組織設計

組織づくりは会社が成長にさしかかる段階で多くの起業家が突き当たる壁となります。人が増えるに従い、目標を共有し動機づけを行いながら管理していく仕組みが必要になりますが、機能する仕組みをつくることは簡単なことではありません。

組織設計にあたっては次の5つの要素をベースに考えていきます。

①構造:その組織にどの機能を持たせるのか

事業全体のプロセスを分解し、各プロセスに必要な機能を明確にします。分解された機能の構造は組織図として表されることが一般的です。組織構造を基本として業務フローと指揮命令系統が決まることになります。

②業務:業務フローの最適化

各業務プロセスを整理し無駄や重複を省いて業務フローを効率的なものにします。それぞれの機能ごとに分業することのメリットを最大化するために部門の専門性と関連性についてよく検討することが重要です。

③人材:アサインメントの最適化

本人の意思に加えて、スキルやパーソナリティ、ポテンシャルなどアサインメントにはさまざまな要素が絡みます。結果としてのパフォーマンスが重要なので、ひとつの考えにとらわれず、多くの可能性を検討すべきです。

④情報:情報共有の基盤・方法の整備、レポートラインとエスカレーションのルールの設定

業務上の情報伝達・共有、通常業務でのレポートラインと非常時のエスカレーションなど指揮命令系統の範囲と権限を明確にしておく必要があります。

⑤意思決定:ポジションにおける決済範囲と責任

意思決定と責任の所在をポジションや会議体など、どこに置くのか、④で見た情報の流れを合わせて設定します。

⑥報酬:責任と報酬のバランス

組織メンバーの役割に与えられた責任の大きさと報酬は連動します。報酬は物質的なインセンティブにすぎず、モチベーションとパフォーマンスは人間関係や組織理念、メンバーの持つ自己実現欲求の程度などに大きく影響されます。報酬の仕組みづくりにはこの点も考慮します。

人材開発

人が育つことで組織は強くなり、安定した事業運営と事業発展の源泉となります。パフォーマンス向上に結びつく人材の能力とモチベーションを高める取り組みが人材開発です。

人材開発は以下のフローで考えるとよいでしょう。

①メンバーのスキルセットについて「現状の姿」を把握する

②スキルセットについて「あるべき姿・望ましい姿」を検討し定義する

③現状と理想のギャップを把握し人材開発のためのプログラムを検討する

④OJT、研修、実務の観点から具体的なステップに落とし込む

人材開発には、人を育てるための環境・仕組み・ノウハウが必要であり、組織の階層によっても大きく異なるものです。

上記①〜④をPDCAのサイクルのなかで育成に結びつける仕組みづくりが求められます。

評価

適切な評価制度の運用がメンバーのモチベーションを高めることにつながり、長期的な人材開発の指針となります。

一般的な評価の指標は以下のようなものがあげられます。

①成果評価:売上等の数値・結果から評価する

<メリット>評価基準がわかりやすく、明確・簡便に運用できる

<デメリット>短期的な指標に注力される恐れがある

②能力評価:メンバーの「成果につなけることができた」能力を抽出して評価する

<メリット>管理部門等の評価も行いやすい

<デメリット>能力測定が難しい、脳力開発には時間がかかる

③情意評価:仕事に対する向き合い方や姿勢を評価する

<メリット>組織風土を醸成することができ、新入社員の評価に適している

<デメリット>定性的な評価に偏る恐れがある

評価制度は求める能力や役割、パフォーマンスに対するメンバーへのフィードバックという側面を持ち、報酬というインセンティブに直接結びつくものです。

一方で、報酬との整合性や評価の公平性、評価者側の負荷といった課題も評価の仕組みづくりにはついて回ります。

評価制度の仕組みづくりは、「明確性」「具体性」「プロセス重視」といった点に留意して行います。

マネジメントに求められるスキル

ここまで、マネジメントとして「やること」を見てきましたが、その本質は「決めること」と「人を動かす」ことに集約されます。

マネジメントは組織全体の舵取りを担うことであり、経営者・マネージャーには組織のメンバーとは異なるスキルが求められます。

組織のリーダーに求められるスキルとして次の4つを解説します。これらのスキルは他のメンバーのように上から与えられるものではありません。常に自ら向上させていく意思が必要です。

意思決定スキル

経営者・マネージャーの日常は、自社・組織の将来や直面する課題についての意思決定の連続です。

例えば、

例1)ある製品の関東地方の売上が落ちている。人員を増強すべきか、撤退すべきか。

例2)自社の30代の離職率が高まっているが、打ち手を考えたい

例3)自社ウェブサイトにおけるカゴ落ちが増えている(購入率低下)が、打開策としてキャリア決済の導入は有効か

いずれも「ヒト・モノ・カネ・情報」すべてに関わり、

「決定による影響度」

「他のイシューのなかでの優先度」

「実行にかかるリソース」

「遂行の確度」

といった、絡み合う要素を踏まえ、限られた時間のなかで答えを出す必要のある問題です。

このような複雑な問題を考える際に役に立つのが、ロジカルシンキングやクリティカルシンキング、イシューツリーといった思考法、SWOT分析、PEST分析、3C分析などのフレームワークです。

・ロジカルシンキング

(結論と根拠にわけ論理的なつながりを理解する論理的思考法)

・クリティカルシンキング

(批判的思考法といわれ、認識している論理構成から離れて考えること)

・イシューツリー

(論点を整理するために、事柄をツリー構造に分解して具体的な事柄に落とし込む)

・SWOT分析

(事業が直面する課題に対して、自社の強み・弱みと機会・脅威の要因を分析する)

・PEST分析

(自社のマクロ環境を政治・経済・社会文化・技術革新の観点から洗い出す)

これらのツールや方法論に関する知識は意思決定に大きく役立つものです。マネージャーが学ぶべき問題解決の考え方は、ここにあげたもののほかにも数多くあり、意識して取り入れていく姿勢が求められます。

コミュニケーションスキル

「人を動かす」ために不可欠なのがコミュニケーションスキルであり、マネジメントの巧拙に大きく影響する能力です。伝え方ひとつに相手と周囲の行動は大きく左右されます。

組織のメンバーとのコミュニケーションでは以下のような点を意識し、互いに納得し理解の齟齬がない対話を心がけます。

①相手がビジネス上で何を大切にしているか

②相手がどのようなことにやる気を出すのか(数値目標、感謝、仲間など)

③目標に対してスキルが足りているか、足りない場合の補い方

④前提となる情報に不足はないか

⑤相手ののリソースは十分か

⑥相手のプライベート、心身、業務上の悩みやトラブルはないか

「傾聴力」や「アサーション」、「コーチング」などコミュニケーション技術を知っておくことも大切ですが、最も重要なのは誠意を示すことや真摯な態度、熱量を伝えるといった人間的な側面を疎かにしないことです。

管理スキル

管理とはマネジメントそのものです。管理スキルはここまで述べたマネジメントの役割にすべて関わります。

経営管理論の礎を築き「管理原則の父」と称される仏経営学者、ファヨールは、管理を「計画」「組織」「指揮」「調整」「統制」の5つのプロセスと定義しています。

①計画

会社の目指すMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に沿って目標とそれを実現するための戦略を立て、それを実行計画に落とし込むこと。

②組織

計画の実行に則した組織を設計・再構築して各部門の役割と責任を明確にすること。

③指揮

組織とメンバーに対して計画を実行するための指示を出すこと。

④調整

組織が計画を実行するために各部門の調整を行うこと。

⑤統制

計画の進行をチェックして障害を取り除き、計画を達成するために組織に働きかけること。

米経営学者、カッツはこれらを行うために必要なスキルとして、以下の3つをあげています。

・テクニカルスキル(業務遂行能力・専門能力)

・ヒューマンスキル(対人関係能力・人間理解能力)

・コンセプチュアルスキル(概念化能力)

さらに、マネジメントをロワーマネジメント、ミドルマネジメント、トップマネジメントの3段階にわけると、トップマネジメントほどコンセプチュアルスキルの比重が増すと指摘しています。

コンセプチュアルスキルは物事を抽象化し、本質を理解する能力ということができます。

コンセプチュアルスキルを高めるには、意思決定スキルでもあげた思考法を身につけることに加え、さまざまな課題に自ら積極的にチャレンジして場数を踏み、経験を増やすことが最も効果的です。

分析スキル

マネジメントを行うなかで、さまざまな問題を解決し結果に結びつけるための前提となるのが分析スキルです。分析スキルは情報を収集・整理し、取り扱う能力と言い換えることができるでしょう。

分析スキルは、自社の外部からもたらされる情報と組織内部で発生する情報を広く集め、取捨選択・整理加工した後に、戦略立案と計画実行に関わる問題解決に結びつける能力です。

マネジメントはPDCAの繰り返しという側面も持っています。実行(Do)した結果を正しく分析(Check)することができなければ、改善につなげることができません。

戦略や施策の進捗を数字に落とし込み、具体的にレポーティングするといったことは経営者レベルでも行われています。

また、組織内部の情報という点では、組織が大きくなるほど正確に把握することが難しくなり、レポーティングラインを整備すると同時に情報システムの活用が欠かせないものとなってきます。

営業の進捗や顧客管理についてはCRM、製造分野ではSCM、社内リソースの一元管理を行うERPといった情報システムも、組織が一定の規模になれば導入を検討する機会が出てくるでしょう。

マネジメントのフレームワーク

マネジメントでやるべきこと、マネジメントに必要なスキルとして、ここまでに挙げた内容は膨大です。一度にすべて取り組むことは難しく、取り組むべき要素もそれぞれの経営者やマネージャーによって異なります。

そこで、ここからは課題の発見と目標設定、その進捗確認に役立つ具体的なフレームワークを紹介します。

7S分析で課題を見つける

7S分析とは組織変革や経営改善を目的に、企業の持つ経営資源の7つの要素に着目したフレームワークです。マッキンゼーのコンサルタントによって開発された7S分析は、組織設計の分野で成果をあげている実践例を集約したものといわれています。

それぞれの経営資源の頭文字を取った7つのSは、短期的に修正・改善の可能なハードウェアとしての3つのSと、長期的視点で修正・改善に取り組むべきソフトウェアとしての4つのSに分けられます。さらに、7つのSのバランスを強調している点が、このフレームワークの特徴でもあります。

3つのハードSと4つのソフトSはそれぞれ次の経営資源を指しています。

<ハードS>

戦略(Strategy)

中長期的な成長や具体的な企業の目的を達成するための事業の方向性。市場での競争優位を作り出すためにヒト・モノ・カネ・情報をどういう優先順位でどう配分するかを決めたもの。

組織構造(Structure)

組織の成り立ち。どんな部門で構成され、どんな指揮命令系統を持っているか。

システム(System)

組織を管理するための仕組み。情報のやりとりや意思決定の方法、社内制度など組織を成り立たせるためにどういう取り決めをしているか。

<ソフトS>

スタッフ(Staff)

人材の構成と配分。動機づけや人材開発の方法など。

経営スタイル(Style)

組織に根付く文化的な特徴や風土。リーダーシップのあり方や組織メンバーの全体的な傾向。

経営スキル(Skills)

企業の得意分野。競争優位を作り出している中心的な要素。技術・販売・マーケティングなど特定の分野で他社よりも優れているところ。

価値観(Shared Valure)

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に代表される、組織全体に掲げられた共通の価値観。他の6つのSの中心に位置付けられる。

これらのSについて、それぞれの現状と理想のあり方を言語化し、理想と現実のギャップから課題を明確にした上で改善のための施策を考えます。

その際に、1つのSのみ、あるいは、ハードS、ソフトSだけを修正・改善しようとしても成果が見込めないことが明らかにされています。1つのSと他の6つのSの関連性と影響について検討することが、7Sを分析する際の最も重要なポイントです。

7S分析は、7つの要素の全体最適を目指すフレームワークです。実際に運用するためには、それぞれのSについての詳細な調査と経営トップが主導する形での全社的な取り組みが必要です。

SMARTで目標の確からしさを検証する

SMARTの法則ともいわれ、目標設定を有効なものにするための目標の立て方の基準を示したフレームワークです。

目標には、達成する意義と実現可能性が必要であり、実現不可能な目標や容易に達成できる目標には意味がありません。

組織やメンバーが適切な目標を設定するための基準とするべきSMARTは、以下の5つの頭文字をとったものです。

◆Specific(具体的な)

誰が見てもわかる、明確かつ具体的な表現・言葉で表す

◆Measurable(測定可能な)

目標の達成基準や度合いが定量的に表現されている

◆Achievable(達成可能な)

現実的に達成可能なものであること

◆Related(経営目標に関連した)

目標が自らの職務・所属する部署・組織全体の目標に関連している

◆Time-bound(期限がある)

目標達成までの期限が日付等で設定できる

SMARTの各要素を決める際に、成果目標と行動目標に分けて考えることがポイントです。成果目標は出したい結果そのものであり、行動目標は結果を得るために取るべき行動を指します。

どちらも目標になりますが、成果目標を設定した場合には、それを達成するための行動目標に落とし込み、一つひとつの行動をクリアしていきます。

OKRで目標と進捗を管理する

Intelで考案され、GoogleやFacebookが採用することで注目された目標管理手法で、Objective and Key Resultsの頭文字をとったものがOKRです。

OKRの考え方の特徴は、一つの目標(Objective)に対し、その達成度の度合いを示す複数の成果指標(Key Results)を設け、成果指標を基準として目標に向けて着実な行動を促していくところにあります。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に代表される定性的な目標に対し、定量的な評価基準を設けることで、達成度合いを明確な基準として進捗を測ることが可能になります。

OKRは組織全体、部門・チーム、個人それぞれに設定し、個人の目標は上位目標と整合性があることが求められます。

目標(Objective)は次のような基準で設定します。

・一度に目標を3~5個設定する

・チャレンジングなものであり、達成のためにストレッチが必要なもの

・目標は到達点や達成した状態を表す

・シンプルで客観性と具体性がある

・1~3ヶ月、主に四半期で達成を目指すもの

成果指標(Key Results)は以下を設定基準とします。

・目標1つにつき成果指標を3つ設定する

・評価指標は定量的に計測可能なもの

成果指標(Key Results)の評価は以下の点に注意します。

・OKRは実績評価ではない

・成果指標の達成度合いが60~70%で適切な目標設定だったことを確認

・OKRの結果となる成果指標は公表し共有する

・四半期以内にOKRの結果を検証

加えて、目標設定の際に主観的な達成の可能性を示す「自信度」をあらかじめ表明しておくことや、週単位で目標達成の進捗を報告し合うチェックインミーティングといった場を設けることが推奨されています。

OKRの運用では導入の目的と、OKRがどう機能するかといった点についてあらかじめメンバー全員で共有・合意しておくことがもっとも重要です。その合意をもとに部門や組織の目標について活発な議論が生まれることも想定しており、その結果として個人に設定された目標に対する納得度も高まることが期待されます。

やってはいけないマネジメント

経営者・マネージャーが陥りがちな間違ったマネジメントについてご紹介します。ハラスメントなどコンプライアンスに外れるようなことは論外ですが、特に経験の浅いマネージャーは次のような問題を抱えることが多いものです。

例1)目標に対する進捗が見えない:管理スキルの不足

例2)部下やメンバーの能力に対する不信感:分析・コミュニケーションスキルの不足

例3)期待したアウトプットが出てこない:動機づけ、人材開発の不足

抱える課題や問題解決の方法は経営者それぞれによって異なります。「自分ならどうするか」を常に考えておく姿勢が経営者には求められます。

マイクロマネジメントが考える力を奪う

必要以上の監視・干渉を行うことがマイクロマネジメントです。マイクロマネジメントは部下の主体性を奪い、モチベーションを低下させることにつながります。目標を達成する道筋やパフォーマンスを発揮できる条件は、人によってそれぞれであることを認識する必要があります。

マイクロマネジメントは無意識的にも意識的にも行ってしまうものです。

スキルが不足している部下に、つい自分のやり方を押し付けてしまうことはありがちです。しかし、最初から答えを与えてしまうことは、創造力や忍耐力を奪い、答えや結果を導き出す力を削いでしまう結果となり、依存性を高めてしまいます。

また、政治的な要因や感情的な問題から、能力のある部下や特定の部下に対して影響力を意図的に行使するためにマイクロマネジメントを行うといったことがあります。倫理的に間違っているものの、現実的にはどの世界にも起こりがちなことです。部下との間に対立を生んでしまう行為は、多くの場合不毛な結果に終わります。

管理者側の立場にある場合、自分の能力への不安や社内評価など、自己顕示欲の結果としてマイクロマネジメントを行ってしまうことがあります。これまでにあげた目標設定や管理方法のスキルを高めるとともに、管理者としての自らを適正に評価・把握する態度が必要です。

指示がない・指示が曖昧

マイクロマネジメントとは反対に、上司・部下間で取るべきコミュニケーションが不足してしまうこともよく見られることです。

上司の側が指示を与えない、指示の内容が曖昧であるといったことは、一見すると部下の自主性を尊重しているように映ります。部下が自発的に行動できるマインドとそれだけのスキルを持ち、結果を出せれば問題ないようにも思えます。

しかし、管理者側が自分自身の業務やタスク管理が不十分で、組織全体として何をしなければならないかを把握できていないために、適切な指示を与えられない場合も少なくありません。

また、部下のスキルや状況に合わせて、その行動を組織が求める結果に導くのは部下の主体性ではなく、上司の責任です。

1つの指示を行う場合でも、メンバーの特性や置かれた状況、モチベーションの度合いなどに応じて、部下の結果を引き出すのが優れたマネジメントのやり方ということができます。

余裕のない時こそ、他責を排して目標に立ち戻る

管理する側は負う責任が大きい以上、業務の広さと深さが増し、解決しなければならない課題も増えていきます。業務が滞る状況に直面する場合には必然的に精神的にも肉体的にも追い詰められます。

上手く行かない直接の原因は、部下のミスや行動の不足である場合がほとんどです。しかし、それを未然に防ぎ、結果を求めることがマネジメントの役割であり、その責任は常に管理者の側にあることを認識しなければなりません。

管理者も人間なので余裕がなくなれば「他責」の気持ちが出てきます。「他責」の気持ちを排除し、自分に求められる結果は何か、そのために何をしなければならないかを、どのような状況にあっても考え続けるのがマネジメントに携わる立場に課せられたことです。

マネジメントに求められるマインド:真摯さ

ここまで、マネジメントのスキルやフレームワーク等を伝えてきましたが、マネジメントで最も重要となるのはマインド、つまり「真摯さ」です。極端に言うなら、マネジメントのスキルや知識があったとしても、「真摯さ」を欠いてしまうと人は動かないでしょう。

「真摯さ」は言い換えると、「人としての誠実さ」と表せます。そして、これらは次のような要素に落とし込めると考えられます。

①自分に対して:自分の行動に胸を張れるか、物事に対して最善を尽くすことができているか

②他者に対して:礼節をもって接し、相手の感情・尊厳を重視できているか

③社会に対して:自身の行動が社会の規範・手本となっているか

ここからわかるように、「真摯さ」はスキルセットやいわゆる「How to」ではありません。ある意味、その人の素質や才覚に近いかもしれませんが、絶え間ない内省、様々な交流・経験によって得られるものであり、その点では日々の努力・意識によって手に入れられるはずです。

まとめ:マネジメントの本質

マネジメントを捉える上でさまざま方法論が存在します。ここにあげたフレームワークやさまざまな分析方法を駆使してロジカルに考えていくことはマネジメントに取り組む上で大きく役に立ちます。

しかし、それだけではマネジメントする力をつけていくには不十分です。なぜなら、マネジメントが対象とするのは組織であり、組織を形作っているのは人だからです。

先ほど、「人を動かす」ことがマネジメントの重要な要素だと述べましたが、人を動かすことは組織という集団に大きな影響を与え、意思決定の責任を負うことと常にセットであることを忘れてはなりません。そして、人を動かすためには「真摯」さ、つまり、小手先のスキルではない人格や、他者への尊敬や配慮が不可欠と言えるでしょう。

それがマネジメントの本質であり、組織に参加してくれた人に対して真摯な態度で臨むことが求められます。

CLAS BUSINESSでは、今後もビジネスに携わる人、経営者やマネージャー、様々な現場に携わる人に役に立つ情報をお届けします。