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新規事業の必須ツール「リーンキャンバス」とは?作成方法・活用事例を徹底解説

新商品を扱う部門やスタートアップ企業が陥りがちな罠の1つが「リソースをかけて完成度の高い製品・サービスを作ったものの、いざ市場に出してみると全く使われない」ことです。

このような問題を避けるためには、仮説・検証を繰り返しつつ、最低限のコストで無駄のない製品・サービス開発を行う必要があります。そのために最適なフレームワークが「リーンキャンバス」です。

今回の記事では、近年注目度が高まっているフレームワークである「リーンキャンバス」を解説します。

1.リーンキャンバスとは
2.リーンキャンバスの9つの要素
2-1.顧客セグメント
2-2.課題
2-3.独自の価値提案(UVP)
2-4.課題解決・ソリューション
2-5.販路(チャネル)
2-6.収益の流れ
2-7.主要指標
2-8.コスト構造
2-9.圧倒的な優位性
3.リーンキャンバスを活用するメリット
3-1.ビジネスモデルの要点を把握しやすい
3-2.事業計画書に比べて作成・修正しやすい
3-3.シェアやフィードバックの効率がよい
4.リーンキャンバスの注意点
5.リーンキャンバスの作成方法や書き方と活用方法
5-1.step1 各要素を言語化する
5-2.step2 仮説検証を繰り返しながらアップデートする
6.リーンキャンバスの活用事例
7.リーンキャンバスを上手く活用しよう

リーンキャンバスとは

リーンキャンバスは、9つの項目を用いて、ビジネスモデルをまとめるフレームワークです。「Running Lean」の著者であり起業家でもあるアッシュ・マウリャ氏によって提唱された概念で、スタートアップや新規事業開発における仮説立案・検証に向いています。

リーンキャンバスは、シンプルな構成になっており、チームで共有しやすいフレームワークです。1枚の紙で事業内容を俯瞰的に見られるため、仮説検証のサイクルを効率的に行えます。

リーンキャンバスが生まれた背景には、昔に比べ起業しやすい環境が整いつつあり、それに伴ってスタートアップの企業が増えている中で、特に成長スピードが速いスタートアップにおいて、よりシンプルな仮説検証のサイクルが求められたということが挙げられます。

スタートアップで事業を始める際や新規事業を開発する際は、顧客ニーズや自社の優位性はあくまで「仮説」状態であり、この仮説が正しいものであるのかどうか、事業の全体感を俯瞰しながら検証・修正を繰り返す必要がでてきます。リーンキャンバスは、このようなフェーズで多くのPDCAサイクルをスピーディーに回すために、有効なツールといえるでしょう。

リーンキャンバスの9つの要素

課題 ソリューション 独自の価値提案 圧倒的な優位性 顧客セグメント
主要指標 チャネル
コスト構造 収益の流れ

前の項目でも触れたように、リーンキャンバスには重要な9つの要素があります。まずはリーンキャンバスの基礎知識として、9つの要素を順番に見ていきましょう。

1. 顧客セグメント

「顧客セグメント」は、いわゆるターゲットです。サービスや商品を利用する顧客層を設定します。リーンキャンバスの中心となる、9つの要素のなかでも特に重要な項目です。

ここでは、想定される顧客の年齢や性別、職業やライフスタイルなどの属性を明確にしておくことが大切です。

例えば、同じコーヒーショップに来店する客でも、「朝の仕事前の時間帯にやってくるビジネスマン」と「昼過ぎにやってくる子連れの母親」では、全く異なるニーズを抱えています。顧客セグメントを細かく定義していないと、向き合うべき顧客の課題」が明確にならず、見当違いのビジネスモデルを生み出してしまうことも少なくありません。

また、顧客セグメントの設定の際には、合わせて「アーリーアダプター」になってくれそうな顧客セグメントを考えておきましょう。アーリーアダプターとは、初期段階で商品・サービスを受け入れ、ほかの顧客層に影響を及ぼす人々です。アーリーアダプターを設定しておけば、サービスの直近の方向性が定まりやすくなるでしょう。

2. 課題

「課題」とは、顧客セグメントで設定した顧客が抱えている課題です。優先度の高い課題を3つ選び、順番に記載していきます。顧客視点に立って重要な課題を洗い出すことで、顧客ニーズやソリューションを導き出すことができます。

また、同時にここで挙がった課題を解決するための代替サービス・代替商品も書き出しておくと良いでしょう。現状の代替策と比較して、自社サービス・商品をどのように差別化するのかを考えやすくするためです。

3. 独自の価値提案(UVP)

「独自の価値提案」には、顧客の課題を解決するために提供する自社独自の価値を書きます。Unique Value Proposition(略:UVP)とも呼ばれます。価格・利便性・機能など、どこに自社ならではの強みが打ち出せるのかを考えながら、よりオリジナリティの高い価値を設定するとよいでしょう。

もちろん、自社ならではの強みを書き出すのは簡単ではありません。9つの要素のなかでも特に設定が難しい項目ですが、リーンキャンバスの核になる部分なので、必ず初期段階で埋めるように心がけましょう。

4. 課題解決・ソリューション

「課題解決・ソリューション」には、顧客が抱えている課題を解決するための、具体的な方策を書きます。「独自の価値提案」でリストアップした代替サービス・代替商品と照らし合わせながら、、オリジナリティのあるソリューションを考えましょう。

5. 販路(チャネル)

「販路(チャネル)」には、顧客にサービスや商品を提供するためのルートについて書きます。販路が上手く設定できていなければ、良質な商品・サービスも輝きません。

具体的には「SNSを駆使してエンゲージメントの高い顧客とつながる」「訪問型でコミュニケーションを重視して販売する」など、ビジネスモデルや顧客セグメントの項目を踏まえて、最適な販路を設定しましょう。

6. 収益の流れ

「収益の流れ」には、文字通りどのような流れで収益を獲得するのかを書きます。例えば「月額/年額のサブスクリプションプランを用意し、年額では20%のディスカウントをつける」など、商品・サービスの価格についてできるだけ具体的に言及するとよいでしょう。

7. 主要指標

「主要指標」には、KPI(重要業績評価指標)を書き込みます。KPIとは、最終的な目標(KGI)を達成するために重要になる中間目標です。

KPIを設定する場合は、数値を使ってなるべく具体的に算出するよう心がけましょう。個々のKPIを達成することで、KGIが達成されるよう、自社のビジネスにとって重要な変数を見極めることが大切です。

8. コスト構造

「コスト構造」は、商品やサービスを提供するためにかかる、全体的なコストをまとめるための項目です。独自の価値提案を行うために、具体的にどれくらいのコストがかかるのかを書き込みます。

自社の人件費はもちろん、アウトソーシングをする場合はその費用もかかるでしょう。具体的な数字を算出できれば、それをまとめておくのがベストです。

9. 圧倒的な優位性

「圧倒的な優位性」は、競合他社が絶対に真似できないような、具体的な商品・サービスの強み、つまり競合優位性のことです。自社独自のノウハウやリソース、実績や技術などがそれに当たります。

しかしリーンキャンバスを通して仮説を検証していく過程で、ほかにはない優位性が見つかるケースもあります。具体的な内容が浮かばなければ、最初は空欄にしてしまっても構いません。

リーンキャンバスを活用するメリット

記事の冒頭でも少し触れましたが、リーンキャンバスにはさまざまなメリットがあります。ここでは、リーンキャンバスを活用するメリットを、大きく3つに分けて解説します。

ビジネスモデルの要点を把握しやすい

リーンキャンバス最大のメリットは、ビジネスモデルの要点がシンプルにまとまっていることです。「どのようなビジネスモデルなのか」が分かりやすく、上司や社内関係者にも共有しやすいフレームワークとなっています。

しかしいつまでも上手くいくビジネスモデルは存在しません。最適なビジネスモデルは、時代によって移り変わっていくものです。後の項目でも詳しく触れますが、「どの時点でのビジネスモデルなのか」を明確化しておくようにしましょう。

事業計画書に比べて作成・修正しやすい

事業計画書に比べて作成や修正をしやすいのもリーンキャンバスの魅力です。事業計画書は、十数ページにもなる資料なので、作成に膨大な時間がかかります。しかしリーンキャンバスは、A4用紙1枚にビジネスモデルをまとめる形式なので、事業計画書に比べて作成・修正が容易です。

ただしリーンキャンバスは、あくまでもビジネスモデルの要点をまとめ、仮説立案・検証に役立てるものです。事業計画書と比べて、網羅性には劣るので注意しましょう。

シェアやフィードバックの効率がよい

「ビジネスモデルの要点を把握しやすい」の項目ともつながりますが、ビジネスモデルがコンパクトにまとまっているため、シェアしやすいというメリットもあります。A4用紙1枚分の資料なので、持ち運びにも便利です。

シェアしやすい書類は、同時にフィードバックの効率がよい資料でもあります。多くのフィードバックを集め、多角的な視点でビジネスモデルを考えられるでしょう。そのためにも、チーム内での綿密なコミュニケーションが重要です。

リーンキャンバスの注意点

リーンキャンバスにはいくつかの注意点があります。まずは「いつの時点の計画なのかを明確化しておく」ことです。ビジネスフレームワークは、必ずある時点を切り取ったものになります。「どの時点での計画なのか」「設定するKPIはどの時点を想定したものなのか」などを明らかにしておきましょう。

また「完璧主義にならない」のも重要です。リーンキャンバスは、仮説立案・検証を繰り返していくシステムなので、最初から全ての項目を埋める必要はありません。仮説を通してブラッシュアップしていき、より完璧なものに近づけていくものです。

ただし9つの要素を決める際は、「顧客セグメント」「独自の価値提案」は必ず設定するようにしましょう。ターゲットが定まっていなければ、仮説検証のサイクルができないからです。

またチームでまとまったリーンキャンバスを作ろうとするのではなく、「個性」を重視するのも大切です。個の考えを尊重し、仮説立案・検証を通じて洗練させていく活用方法をイメージしましょう。

リーンキャンバスの作成方法や書き方と活用方法

リーンキャンバスの作成・活用のステップは、大きく分けて「各要素の言語化」「仮説検証を繰り返しながらアップデート」の2つです。ここではリーンキャンバスの具体的な活用方法を解説します。

step1 各要素を言語化する

最初のステップで、各要素を言語化します。9つの要素が記載できたら、リスクになりうる要素を洗い出しましょう。ここでは要素の言語化と課題の洗い出しについて解説します。

1-1.まずは9つの要素を決めよう

まずはリーンキャンバスの中心となる、9つの要素を言語化する段階です。特に「顧客セグメント」「課題」「独自の価値提案」のような、ビジネスモデルの核となる要素は、優先的に言語化しておきましょう。

記入の順序としては、まず「顧客セグメント」「課題」「独自の価値提案」の3つを埋めます。その後「課題解決・ソリューション」「販路(チャネル)」「収益の流れ」「コスト構造」「主要指標」「圧倒的な優位性」の順で記入しましょう。

前の項目でも確認したように、最初の段階で全ての要素を書き込む必要はありません。具体的な内容が思い浮かばないものはいったん空欄とし、仮説検証の段階で書き足していきます。

各要素を言語化する際は、必ず顧客視点で考える癖をつけましょう。

1-2.課題を洗い出す

一通り言語化できたら、仮説立案・検証のサイクルを回す前に、現状で考えられる課題を洗い出しましょう。具体的には、最初に言語化した9つの要素のうち、リスクになりうる要素をマークしておきます。

リスクになりそうなものに優先順位をつけておくことで、実際に仮説検証のサイクルを回すことになった際に、問題発見・解決の流れがスムーズになります。

step2 仮説検証を繰り返しながらアップデートする

ここからは実際に仮説を検証していきます。一般的な流れは、「仮説の検証→課題を解決する製品・サービスのリリース→規模の拡大」という進め方です。ここではそれぞれの過程で意識すべきことを解説します。

2-1.仮説を検証する

各要素を言語化するステップが終了したら、実際に仮説検証を繰り返し、リーンキャンバスを洗練させる段階に入ります。まずは事前に設定した仮説を検証しましょう。特に注力して検証すべき仮説は、「顧客セグメント」「課題」「ソリューション」です。

最初に、顧客の課題を解決するためのソリューションが、実際に顧客の求めているものなのかどうかを検証します。特にインタビューは有効です。なるべく関連性の高いサンプルを選び、なおかつ多様な意見を集めましょう。

2-2.課題を解決する製品・サービスをリリースする

インタビューなどで仮説を検証したら、顧客が抱えている課題の本質部分を解決する商品・サービスをリリースします。これはあくまで試作品・試作サービスであり、大きな予算をかけて作るものではありません。実用最低限の商品としてリリースします。

上記のような商品・サービスは、MVP(Minimum Viable Product)と呼ばれています。MVPは、顧客のニーズをある程度満たすものとして想定されますが、リリースに伴って新しい課題が発見される場合もあるでしょう。MVPをリリースし、さらに検証を重ねていきます。

2-3.規模を拡大していく

MVPをリリースし、市場性の検証をします。ここでも顧客にインタビューをし、さまざまな評価を集めて、課題解決のヒントにするとよいでしょう。まずはMVPに関する感想を聞き、必要があれば試作品に修正を加えていきます。

ある程度定量的なデータが得られ、ビジネスモデルとして成立しそうであれば、商品・サービスの規模を拡大していきます。メンバーのモチベーションにつながるよう、KPIの設定を忘れないようにしましょう。

リーンキャンバスの活用事例

実際にリーンキャンバスを活用している事例を参考にするのも重要です。今回の記事では、よく知られている例として、RIZAPの活用事例を見ていきましょう。

RIZAPグループは、健康食品やダイエット食品、パーソナルトレーニングなどのサービスを提供している企業です。RIZAPのリーンキャンバスを理解するために、9つの要素に分解していきます。

顧客セグメント ・以前ダイエットをしていたが長続きしなかった人
・アーリーアダプター:「引き締まった肉体を手に入れたいビジネスマン」
課題 ・ダイエットがなかなか上手くいかない
・長続きしない・モチベーションが上手く保てない
→代替サービス:一般的な会員制のジムで行うパーソナルトレーニング、グループで行うフィットネスプログラム
独自の価値提案 科学的根拠に基づいたアルゴリズムを用いて、短期間で引き締まった肉体にする
課題解決・ソリューション ・パーソナルトレーナーによる1人ひとりに合わせた最適なトレーニング方法の指導
・SNSを通じた毎日の食事管理
販路(チャネル) ・テレビCMや電話栄養サポート相談
・Youtubeなどのオンライン広告
・オンラインパーソナルトレーナー
収益の流れ 高額な会費を設定して短期間で回収
主要指標 ボディメイク達成率
コスト構造 広告宣伝費、システム費用、設備管理費、人件費など
圧倒的な優位性 サービスの独自性(結果を出すことにこだわったプログラム、モチベーション管理の技術、個人に合ったダイエットプログラムを作成するアルゴリズム)

リーンキャンバスを上手く活用しよう

ここまでリーンキャンバスについて、その概要や使い方まで解説してきました。リーンキャンバスは、スタートアップや新規事業開発時の仮説立案・検証に向いているフレームワークです。スタートアップが増えている昨今では、より注目度の高い手法となるでしょう。

短期間でビジネスを成功させるためには、いかに素早く自社独自の提供価値を洗練させていけるかが重要になります。今回の記事で解説したリーンキャンバスの作成方法や活用方法、活用事例などを参考にして、ビジネスに役立ててみてください。