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SMARTの法則とは?5つの指標を理解し意義ある目標設定を行う方法を解説

目標を定めずにビジネスを始めることはまずないでしょう。しかし、「目標を立ててもいつも達成できず終わってしまう」「組織になかなか浸透しない」「従業員に達成しようという意識が生まれない」といった問題が起こることは珍しくありません。この場合、目標の立て方が良くない可能性があります。

目標とは「行動対象」であり、目標がきちんと定まっていなければ行動も起こせません。形骸化しない目標を定めるためには、「SMARTの法則」を活用することをおすすめします。この記事では、SMARTの法則と具体的な目標設定の方法について解説します。ビジネスシーンにおいて目標を決める際にぜひ役立ててください。

1.SMARTの法則とは
2.SMARTの法則を構成する5つの指標
2-1.Specific:具体性
2-2.Measurable:計量性
2-3.Achievable:達成可能性
2-4.Relevant:関連性
2-5.Time-bound:期限
3.ビジネスでSMARTの法則を活用するメリット
3-1.正確かつ納得度の高い人事評価につながる
3-2.組織・個人にも幅広く活用できる
3-3.パフォーマンスが向上する
4.SMARTの法則をうまく使うための注意点
4-1.PDCAサイクルを回す
4-2.目標「管理」手法と組み合わせる
4-3.目的と目標を混同しない
4-4.5つの指標にこだわりすぎない
5.SMARTの法則をさらに活用できる!派生フレームワーク
5-1.SMARRT
5-2.SMARTER
5-3.SMARTTA
6.SMARTの法則の活用事例
6-1.事例1:店舗経営
6-2.事例2:BtoB営業
6-3.事例3:人事
7.まとめ:SMARTの法則を活用して適切な目標を立てよう

SMARTの法則とは

「SMARTの法則」とは、目標を立てる際に守るべき決まりが盛り込まれているフレームワークです。法則に従うことで、形骸化しない意義ある目標設定を行えるようになります。

この法則は1981年にジョージ・T・ドラン氏によって提唱されたもので、さまざまなビジネスにおいて目標を設定する際に使われています。1981年というと日本では昭和の時代ですが、時代を経てもなお定番として使われ続けているのは、「目標」と「行動」の本質が説かれているからにほかなりません。

SMARTの法則を構成する5つの指標

「SMARTの法則」のSMARTとは、以下に示す5つの基準の頭文字を取って命名されたものです。

  • 1.Specific(具体性)
  • 2.Measurable(計量性)
  • 3.Achievable(達成可能性)
  • 4.Relevant(関連性)
  • 5.Time-bound(期限)

このルールを守って目標を立てることが、実際の行動や成果へとつながります。ここでは、会員制コワーキングカフェを運営する企業を想定し、それぞれの要素を解説します。

1.Specific:具体性

目標は「具体性」があるものにすべきです。個人によって解釈が異なるようなあいまいな表現を避け、誰もが共通して理解できることを心がけなくてはいけません。

例えば「お客さまを幸せな気持ちにする」「豊かで便利な暮らしを実現する」といったものは、コンセプトや企業理念としては問題ないものの、そのために何をすべきなのかが分かりません。

「売上を増やす」というのはよくある目標ですが、どのような手段で売上を増やすのかという方法が定まらず、具体性に欠けます。ここから一歩踏み込んで、「売上を増やすために必要なこと」を目標にすべきです。

会員制コワーキングカフェであれば、具体性のある目標として「会員数を30%増やす」「客単価を1.5倍に上げる」「稼働率を80%に上げる」などが挙げられます。

2.Measurable:計量性

「軽量性」とは、数値で表すことができるという意味です。「経費をなるべく減らす」「できる限り多くのアポイントを取る」のように個人によって解釈が異なる目標では、効果を期待できません。

会員制コワーキングカフェで「会員数を増やす」という目標を立てたのであれば、次に必要なのは「会員数を100人増やす」など、数値を盛り込むことです。具体的な数値を設定することにより、目標達成率や施策の効果を検証できるようになります。

3.Achievable:達成可能性

目標は、努力や工夫によって「達成できるもの」にすることも重要です。例えば「100人の会員数を1週間で1万人にする」「座席の稼働率を常に100%にする」のように、ほぼ達成不可能な現実離れした目標はモチベーションを低下させてしまいます。高すぎる目標を従業員に強いれば、過重労働にもつながりかねません。

かといって、現状を変えなくても達成できるような低い目標では、設定する意味がほとんどありません。企業のリソースや従業員の能力を把握し、適切な「達成可能性」を考えることが目標設定のキーポイントであり、難しい部分でもあります。

4.Relevant:関連性

「関連性」とは、目標を達成することで何が起こるかが明確であるということです。会員制コワーキングカフェでいえば、会員数が増えることにより「会費による収入増で業績が上がる」「稼働率がアップする」「認知度が高まる」という結果が付いてきます。

反対に、「達成しても業績につながらない」「ビジネスにとってプラスにならない」「誰からも評価されない」など、意味や意義のない目標は適切な目標とはいえません。

5.Time-bound:期限

目標には「達成期限がある」ことも重要です。期限がないと緊張感がなくなり、モチベーションが上がらず、「今月は忙しいから来月から取り組めばよい」のようにダラダラと先延ばしになりかねません。

期限を設けることは、「リミットまでに目標を達成するためには何をすればよいのか」という計画を立てるためにも重要です。期限がないと全てが後手になりがちで、競合他社に先を越される可能性もあります。

ビジネスでSMARTの法則を活用するメリット

「SMARTの法則」に則って目標を設定することには、目標設定や人事評価に対する明確性や納得度が高まり、職場全体のパフォーマンス向上が期待できるというメリットがあります。

ただし大前提として、人事制度がきちんと設計されていることが重要です。人事制度が明確で、なおかつ社内の目線が揃っている環境でこそ「SMARTの法則」のフレームが生きてくると認識しておきましょう。

正確かつ納得度の高い人事評価につながる

「計量性」や「期限」を盛り込んだ適切な目標を定めることで、目標をどのくらい達成したかが誰の目からも見えるようになり、個人の貢献度や実績を把握しやすくなります。

  • 数値に対する達成率
  • 期限までに達成できたか否か
  • 他メンバーの成績や職場の平均と比較して、どの程度の実績を達成したか

このように目標に対する達成度合いが一目瞭然となれば、人事評価の納得度につながります。従業員に「なぜ自分が評価されないのか」という不満を抱かせないためにも、「SMARTの法則」について理解したうえで目標を立てましょう。

組織・個人にも幅広く活用できる

「SMARTの法則」は、組織だけでなく個人的な目標設定にも使用可能です。部下に目標を立てさせる時に「SMARTの法則」を使うように指導すれば、各々が適切な目標を立てられるようになるでしょう。

さらに重要なポイントを理解することで、ビジネスだけでなく「英語力を向上したい」「健康のためにダイエットしたい」といったプライベートなことにも活用できます。上記の場合は、「英語力を測る資格試験に合格する」「TOEICの点数を半年で150点上げる」「3か月後までに5kg痩せる」といった目標が立てられるでしょう。仕事にもプライベートにも役立つ考え方として、幅広い場面で取り入れることをおすすめします。

パフォーマンスが向上する

具体的でなおかつ現実味のある目標を設定することでモチベーションが上がり、パフォーマンスが向上します。これは、「目標達成まで頑張ろう」という気持ちを呼び起こさせるからにほかなりません。反対に目標がない状態では、どこに向かって努力をすればよいのかが分からず、エンジンがかからないともいえます。

また、目標を達成したという成功経験が「次はもっと高い目標を目指してみよう」「さらに工夫して効率を高めよう」など、ビジネス的な向上へとつながります。

SMARTの法則をうまく使うための注意点

目標は、一度定めればそれで終わりというものではありません。形骸化させず、最終的に成功へとつなげることが重要です。そのために押さえておくべき注意点について解説します。

PDCAサイクルを回す

目標を決めたら、具体的な施策に落として実施・検証のサイクルを回す必要があります。施策実行のなかで問題点が見つかったり、ハードルとなるものを見落としていたりした場合は、目標そのものを見直さなくてはなりません。

例えば、会員制コワーキングカフェで「会員数を100人増やす」という目的を立てた場合、「自社コンテンツの拡充」「広告の掲載」「口コミ掲載促進」「紹介制度」といった方策を考えることになるでしょう。このうち「広告の掲載」では、以下のような課題が出てくることが考えられます。

  • 対象となる顧客像(ターゲット)と乖離する媒体を選定していた
  • ターゲットの人数が少なかった
  • CVRが低くCPAが高くついた

こういった状況では、目標達成は困難といわざるを得ません。目標やそれに付随する施策が適切かどうか、常に検証し続けましょう。

目標「管理」手法と組み合わせる

SMARTの法則はあくまで「目標が期日までに現実的に達成可能か」を判断する、「目標の確からしさ」を確認する手法です。これまでお伝えした通り、目標は立てて終わりではないため、実際に進捗を確認するための管理手法も取り入れるとよいでしょう。

代表的な目標管理手法には「MBO(Management by Objectives)」「OKR(Objectives and Key Results)」がありますが、組織や業務の性質に合わせてMBOとOKRを選ぶことになります。

MBOにしろOKRにしろ、「目標」を立てる際はSMARTの法則に照らして確からしさを担保できるとよいかもしれません。

なお、SMARTの法則の「Achievable:達成可能性」については、MBOが100%の達成を前提としているのに対して、OKRはいわゆる「ムーンショット」を目指すため60〜70%の達成を目指すものになります。目標管理手法によって、「現実的な達成可能性」の範囲も変わることになります。

目的と目標を混同しない

ビジネスの最終的な目的は、「雇用の創出」「地方創生」「100年継続する企業にする」など企業によってさまざまですが、そこに到達するまでの目標が目的となってしまうケースがあります。

目的は上記のように理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に近いものであり、目標は目的に近づくための定量的なベンチマークととらえておきましょう。目標は方法や手段であり、目的化してはいけません。英語で表現すれば、目的は「Objective」、目標は「Target」または「Goal」と、その違いが顕著です。

会員制コワーキングカフェの場合、「利用者の可能性を引き出す」「新しい働き方を創出する」といったことが目的になり得ます。一方で目標は、「5年後までに月あたり会員数を1,000人にする」といったものです。

5つの指標にこだわりすぎない

「SMARTの法則」が示す5つの指標では足りなかったり、マッチしなかったりと、自社ビジネスにそぐわない場合も出てきます。その場合は「別の指標に置き換える」「指標を加える」などの工夫やカスタマイズを行いましょう。例えば、経理や総務などのバックオフィス系などは定量的な目標を立てにくく、指標の置き換えが必要かもしれません。

事実、「SMARTの法則」をもとにした派生パターンは数多く誕生しています。それぞれの指標にどのような意義があるのかを掘り下げて理解し、目標と実際の行動を結びつけることが重要です。

SMARTの法則をさらに活用できる!派生フレームワーク

「SMARTの法則」は、多くのビジネスシーンで使われてきました。目標設定の方法として広まるにつれ、5つの指標にカスタマイズを加えた派生パターンも複数誕生しています。「SMARTの法則」をもとにした派生パターンをご紹介します。

SMARRT

「SMARTの法則」に「Realistic(現実的)」がプラスされたバージョンです。目標が現実的かどうかという意味を持ちます。非現実的な目標は「どうせ達成しないだろう」という考えを生み、目標の形骸化やモチベーションの低下につながりかねません。「Achievable(達成可能性)」と合わせて考えましょう。

SMARTER

こちらは「Evaluated(評価)」と「Recognized(認識・承認)」という2つの指標がプラスされています。目標が上司に評価・認識されているか、企業や上層部の方針と合っているかという意味合いを持ちます。目標が組織の方向性に背いていないかどうかを重視しているといえるでしょう。

SMARTTA

「Trackable(追跡可能)」と「Agreed(同意、合意)」が加えられているパターンです。目標の達成度合いが把握・検証できれば、目標の見直しや修正が容易になります。

これは「Measurable(計量性)」とも深く関係しています。また、複数のメンバーが関わるビジネスでは、周囲の同意や合意がある目標を立てることも重要です。

SMARTの法則の活用事例

「SMARTの法則」は幅広いビジネスで活用できるフレームワークです。各業種や職種での具体的な活用事例を紹介します。

事例1:店舗経営

店舗経営において、売上アップのために顧客満足度を高める内容の目標を設定してみましょう。

  • S:顧客に対するサービス・接客を改善しリピート率をアップさせる
  • M:顧客アンケートによる満足度の10%アップ
  • A:ポイントカードやサービスチケットを実装し、従業員には接客マナー研修を実施する
  • R:既存顧客による売上アップとイメージ改善になる
  • T:半年後までに達成

事例2:BtoB営業

BtoB営業は定量的な目標が立てやすいといえますが、達成可能性かの見極めが重要です。

  • S:新規顧客の月間商談成約数を高める
  • M:月あたり新規成約数5社
  • A:多くの来場者が見込める展示会を活用することで、短期間に多くの企業と接点を持ち即日アプローチできる
  • R:営業部全体の目標が達成できる
  • T:四半期中に達成

事例3:人事

企業の組織運営を握る人事においても、目標設定は重要な意味を持ちます。

  • S:事業拡大に伴う新チーム発足のため、中途採用に注力する
  • M:全体で10名、200人にアプローチする
  • A:人事部にて専任の担当者を選出、求人サービスと並行して人材エージェントも利用する
  • R:受注量の増加に対応できるようになる
  • T:四半期中に達成

まとめ:SMARTの法則を活用して適切な目標を立てよう

人は適切な目標を定めることで動き出します。とはいえ、陸上競技の経験がない人にいきなりフルマラソンを走らせるような「無茶な目標」、ただ努力を促すだけの「具体性のない目標」では行動のきっかけにはなりません。

意義のない目標や形骸化してしまう目標を立ててしまうことを避けるために、「SMARTの法則」を活用しましょう。5つの指標を意識するだけで目標のウエイトや重要性は大きく変わり、パフォーマンスの向上だけでなくビジネスの活性化にもつながります。