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「ワークライフバランス」なぜ重要?企業の課題と解決策まで解説

「ワークライフバランス」は世間に広く浸透したものの、「直接的なメリットが分かりにくい」「どのような施策を打つべきかよく分からない」といった課題を持つ企業は多いかもしれません。

ワークライフバランスを充実させることは、短期的には人材確保につながりますし、長期的に見れば売上が増加する傾向にあることがわかっています。いずれにせよ、昨今の働き方改革の流れからも対応は急務と言えるでしょう。

本記事では、ワークライフバランスの重要性やメリットを改めて掘り下げ、企業が抱える課題の解決策を解説していきます。

1.ワークライフバランスとは
1-1.ワークライフバランスの概念
1-2.ワークライフバランスの歴史
2.ワークライフバランスが重視される背景
2-1.少子高齢化による労働力不足
2-2.労働生産性の不振
2-3.SDGs:ジェンダー平等推進目標
3.ワークライフバランスを推進するメリット
3-1.育児や介護による離職防止
3-2.優秀な人材の獲得
3-3.社員のモチベーション、エンゲージメント向上
3-4.企業イメージ向上
4.ワークライフバランスを推進する企業の取り組み
4-1.育児・介護休業取得の推進
4-2.短時間勤務制度
4-3.テレワーク(在宅勤務)制度の導入
4-4.フレックスタイム制度の導入
4-5.年次有給休暇の推奨
4-6.健康経営の実現
5.現在のワークライフバランスの課題
5-1.ワークライフバランスの希望と現状が一致していない
5-2.生産性低下のリスク
5-3.コストがかかる
6.ワークライフバランス推進 成功のポイントは?
7.ライフ・ワーク・バランス認定企業とは?
7-1.ライフ・ワーク・バランス認定企業のメリット
7-2.ライフ・ワーク・バランス認定企業一覧
8.まとめ

ワークライフバランスとは

まず、「ワークライフバランス」という言葉の意味、考え方が生まれた背景を改めて振り返ります。

ワークライフバランスの概念

「ワークライフバランス」とは、「仕事と生活(プライベート)の両方が満たされ、1人の人間として充実した生き方ができること」だと定義できます。

また内閣府は、ワークライフバランスが実現した社会を「国民1人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定義しています。

また、近しい概念に「ワークライフインテグレーション」という言葉が2008年に経済同友会によって提唱されています。同会によると、ワークライフインテグレーションは「会社における働き方と個人の生活を、柔軟に、かつ高い次元で統合」することに触れています。つまり仕事と生活を分けるのではなく、仕事と生活を包括的にとらえて両方を充実させることを目指すのものといえます。

ワークライフバランスの歴史

ワークライフバランスの考え方は80年代のアメリカで生まれたといわれています。働く女性が増えつつあった当時のアメリカでは、行政ではなく企業が「ファミリーフレンドリー」(従業員が家庭と仕事を両立しやすいよう配慮すること)の施策を先導してきました。

優秀な従業員が「結婚」「出産」「育児」などのライフイベントを理由に仕事を辞めてしまうことは企業にとって大きな損失です。人材を確保するためには、仕事と家庭を両立できる環境を整える必要がありました。

90年代に入ると、この考え方は家族の有無にかかわらず、全ての働き手の関心事として広がりをみせます。このような背景から生まれた「ワークライフバランス」はやがて、企業と従業員個人の問題のみならず、さまざまな社会問題を解決する手段としても注目されるようになりました。

ワークライフバランスが重視される背景

日本でのワークライフバランスは、国を挙げて推進されているものです。これほどまでに仕事と生活の調和が重視されるようになったのには、どのような理由があるのでしょうか。ワークライフバランスが重視される背景について解説します。

少子高齢化による労働力不足

ワークライフバランスが叫ばれる大きな要因の1つが、少子高齢化が進んだことによる労働力不足です。とはいえ、ワークライフバランスが少子高齢化そのものを直ちに解決するというわけではありません。

  • 小さな子どもがいて外に働きに行けない
  • 定年退職後も仕事をしたいと考えているのに、働き口がない
  • 家族の介護のためにやむなく退職した

ワークライフバランスの目的は、こういった「働きたいけれど働けない」という人材を活用し、労働力を確保することにあります。実際、「子育て」や「介護」といった家庭の事情で仕事を辞める人は少なくありません。特に女性はこの傾向が強く、女性の世代ごとの労働力率(人口に占める労働力人口の割合)は結婚・出産のタイミングでいったん落ち込み、育児が落ち着いた頃に上昇する「M字カーブ」を描くことで知られています。

ワークライフバランスの実現によって誰もが生活と仕事にバランスよく取り組めるようになれば、労働力不足の改善につながることは間違いありません。

労働生産性の不振

労働生産性とは、労働者1人が生み出す成果、または労働1時間に対する成果のことです。例えば、1時間働いて10個の製品を作れる人と20個の製品を作れる人では、後者のほうが労働生産性が高いといえます。日本は国際社会のなかでも特に労働生産性が低いことで知られ、公益財団法人日本生産性本部のデータ(2021年版)によると主要7カ国(G7)のなかで最下位であり、アメリカの6割程度しかありません。

この労働生産性を高めるために注目されているのが、ワークライフバランスです。政府の調査資料によると、国際的には労働時間が短い国ほど労働生産性が高く、国内に限定しても労働時間が短い都道府県ほど労働生産性が高いと結論づけられています。

この要因は、ワークライフバランスが推進されれば限られた時間内で成果を出すために業務効率化が必須となり、生産性向上に結びつくからです。さらに、プライベートが充実することで、良好な精神状態で仕事に向かうことができたり、そこで得られた経験やスキルを仕事にも生かすことができたりと、仕事とプライベートの好循環を期待できるという側面もあります。

ワークライフバランスと労働生産性には、明確な相関関係があるといえるでしょう。

SDGs:ジェンダー平等推進目標

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、人間の暮らしや環境におけるさまざまな問題を解決し、持続可能な世界を目指すための国際的な目標のことです。

SDGsには17項目の目標がありますが、持続可能な社会を構築するためには女性の活躍が不可欠であるとし、5つめの項目として、「ジェンダーの平等を達成し、全ての女性と女児のエンパワーメントを図る」ことが定められています。

世界的に女性活躍の重要性が認識されつつありますが、日本の状況はというと、まだまだ課題が山積していると言わざるを得ません。

例えば、帝国データバンクが2021年に実施した調査によると、女性管理職の割合は平均で8.9%。過去最高を更新したとはいえ、2003年に国が掲げた「指導的地位に占める女性の割合は少なくとも30%」という指針には到底及びません。

ワークライフバランスを推進するメリット

日本には、プライベートを犠牲にして仕事に全てを捧げることが美徳とされてきた歴史があります。従来のやり方で成功してきた企業が「ワークライフバランスを推進すれば弊害が出るのでは」と考えても無理はありません。しかしワークライフバランスの実現は、労働者だけでなく企業にもさまざまな形で利益をもたらします。企業がワークライフバランスを取り入れるメリットについてみていきましょう。

育児や介護による離職防止

ワークライフバランスを推進することにより、優秀な人材が「育児」や「介護」といった家庭の事情で離職してしまうのを防げます。優秀な人材や頼りになるベテランスタッフが家庭の事情で辞めてしまうのは、企業にとっても大きな痛手です。

リクルートの就職みらい研究所が発表している「就職白書2020」によると、1名当たりの採用コストとして、新卒の場合は93.6万円、中途採用には103.3万円がかかっています。従業員100人の企業で、ワークライフバランスの推進により離職率を15%から5%に改善できた場合、10名分の採用コストであるおよそ1,000万円が削減可能です。

また、離職を防ぐことで、研修やトレーニングといった教育コストも抑えられるため、間接的なコストダウンも期待できるでしょう。

優秀な人材の獲得

長時間労働の問題が浮き彫りになり、「ブラック企業」という言葉が浸透するにつれ、会社選びには「企業の事業規模」や「給与の金額」だけでなく「働きやすさ」が重視されるようになりました。ワークライフバランスが整っていることは働き手にとって大きなアピールポイントになり、「仕事も生活も充実させたい」と考える優秀な人材が集まるようになります。

パーソルキャリアの調査では、転職する際の最重要視する条件について年代別にまとめています。

特に、20〜30代では、「休暇日数」「労働時間」「福利厚生」といった働きやすさと生活のしやすさを重視する傾向にあり、「複業・兼業が可能であること」や「テレワーク・在宅勤務制度があること」を重視する割合も多いという結果になりました。

とりわけ中小企業経営層にとって、人材の確保は大きな課題です。引く手あまたの優秀な人材に自社の強みや魅力をアピールし、就職先として選んでもらうことは簡単ではありません。しかしワークライフバランスは中小企業でも取り入れられるものであり、人材獲得の大きな武器となり得ます。さらに人材の獲得だけでなく、すでに在籍している従業員の定着率アップにも役立ちます。

社員のモチベーション、エンゲージメント向上

ワークライフバランスを推進することにより、働く人のモチベーションをアップさせられるのはもちろんのこと、従業員エンゲージメントも向上します。従業員エンゲージメントとは、従業員が企業や仕事に対してどれだけ信頼を寄せ、愛着を持っているかを示すものです。エンゲージメントが高ければ離職率が下がり、さらに企業の収益アップや職場の雰囲気改善といったプラスの効果をもたらします。

リクルートマネジメントソリューションズの調査では、仕事に対するエンゲージメントが高い集団ほど「労働時間削減」「生産性向上」「働き方(時間・場所)の柔軟化」を実感しており、メリハリのある労働環境が整うことでエンゲージメントが高くなることが示唆されています。

また、仕事以外に打ち込める趣味などにより私生活が充実することは、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を防ぐ上でも重要であることも示されています。

ワークライフバランスは「自分自身の生活を大切にしたい」という個人の思いに寄り添うものです。ワークライフバランスを実現すれば「会社が従業員個人を大切にしてくれている」という気持ちが生まれ、仕事に対するモチベーションや会社へのエンゲージメントを向上させることができます。「生活が充実しているからこそ、仕事もがんばれる」という考え方を企業も持つべき時代なのです。

企業イメージ向上

ワークライフバランスを促進することで、「社員を大切にする企業」「結婚や出産のタイミングで辞めずに働き続けられる企業」というイメージが定着します。これにより「この会社で働きたい」と思ってもらえるだけでなく、顧客からも信頼を得られます。ライバル企業との差別化にもなるでしょう。ひいては会社を長く存続させることにもつながります。

ワークライフバランスを促進している企業であることを公的に示す認定制度もあります。認定を受けることを目標にするのも、ワークライフバランス推進における1つの方法です。

くるみん 厚生労働大臣から「子育てサポート企業」として認定を受けた企業
えるぼし 厚生労働大臣から女性の活躍を推進していると認められた企業
なでしこ銘柄 経済産業省と東京証券取引所が合同で選定する、女性の活躍推進に積極的な上場企業

ワークライフバランスを推進する企業の取り組み

それでは、企業が実際にワークライフバランスを推進する際にどのような方法があるのかを、具体的に紹介します。

育児・介護休業取得の推進

育児や介護を理由に退職する人が後を絶たない以上、「仕事」と「育児・介護」の両立支援は不可欠です。育児や介護が離職理由になるのは、仕事との両立が時間的にも体力的にも難しいからにほかなりません。代表的な支援は「育児休業(育児休暇)」や「介護休業(介護休暇)」を取得しやすくすることです。

育児・介護休業法では、従業員が育児休業や介護休業の取得を希望した場合、企業は拒むことができません。また、育児休業や介護休業を取ったことを理由に、従業員に対し解雇・減給・降格といった不当な扱いをすることも禁止されています。

しかし実際には「社内に取得した前例がなく言い出せない」というケースもあり、企業側から休暇の取得を働きかけることに大きな意味があるといえるでしょう。さらに法律で決められている支援の枠を超え、企業独自の制度を設けることも推奨されています。

また、2022年4月1日からは、「男性育休」が段階的に施行されます。厚生労働省の調査によれば、男性の取得率は2019年度で7.48%、2020年度で12.65%と、女性の5分の1にも満たない状況です。このままでは、女性の家庭での負担を減らすことは難しく、働く女性が仕事と家庭を両立することのハードルを下げることができません。

新しい制度だけに、企業側から従業員に周知していく必要がありますが、同時に育休を取得する男性社員に対してのハラスメントを防止する環境づくりも意識することが重要になるでしょう。

短時間勤務制度

「短時間勤務制度」とは、多くの企業が取り入れている「週5日、1日8時間労働」といった従来の枠組みに流動性を持たせる仕組みです。そもそも育児・介護休業法では、3歳未満の子どもを持つ労働者が短時間労働を申し出た場合、企業は応じなければならないと定められています。

短時間勤務制度の対象となるのは、以下の条件に当てはまる労働者です。

養育している子どもの年齢が3歳未満 子どもが複数いる家庭の場合、3歳未満の子どもが1人でもいれば対象
1日の所定労働時間が6時間以下ではない 短時間勤務制度では、1日の所定労働時間が原則として6時間となる
日雇い労働者ではない 継続雇用されていれば、社員のみならずパート・アルバイトも利用可能
短時間勤務制度が適用される期間に育児休暇を取得していない 子どもが3歳になるまでに育児休暇を取得した場合は対象外
労使協定により適用除外とされた労働者ではない 雇用期間が1年未満・1週間の所定労働日数が2日以下・短時間勤務が困難のいずれかに当てはまる場合は、労使協定により対象外となる場合がある

しかし労働者自身が制度を知らないケースもあるため、企業側から周知したり、法律の基準よりも手厚くサポートする制度を設けたりして推進しましょう。

テレワーク(在宅勤務)制度の導入

「テレワーク(在宅勤務)」制度を導入することで、子どもの送り迎えや家族の介助などで出社がハードルとなる人材が働けるようになります。企業としては、単にテレワーク制度を設けるだけでなく、次のようなサポートをしてテレワークしやすい環境を整えることも、生産性向上を考える上で重要です。

  • インターネット環境の整備
  • パソコンやWebカメラなど必要な機器の貸与
  • 仕事に適した家具の設置
  • 在宅勤務手当の支給

フレックスタイム制度の導入

「フレックスタイム」は、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で労働者が出社時間や退社時間を決められる制度です。1987年の労働基準法改正で導入された歴史があり、認知度は高いといえるでしょう。子どもの送り迎えをしたい人や定期的な通院が必要な人、毎朝の満員電車を避けたい人などにメリットがあります。

フレックスタイム制では出社・退社の時間を完全に従業員へ委ねる方法のほか、必ず勤務しなくてはならない「コアタイム」を設けることもできます。実際に導入するには、就業規則等への規定と労使協定の締結が必要です。

年次有給休暇の推奨

仕事を休みやすくすることは、もともとある年次有給休暇の制度を活用すればよく、特別な準備が必要ないため取り組みやすい施策だといえます。

労働基準法の改正により、2019年4月からは「年間10日以上の年次有給休暇が付与される人に対し、年間5日の有給休暇を取得させること」が義務づけられました。政府は、2025年までに「有給休暇取得率70%」を目標として掲げていますが、2020年の平均取得率は56.6%に留まっています。1984年以降の過去最高水準ではあるものの、まだまだ企業側から取得を推奨する工夫が必要な状況です。

大手プロバイダ企業が実施した「有給休暇に関する意識調査」によると、有給休暇を取得しにくい理由の1位は「職場に休める空気がないから」でした。続いて2位が「自分が休むと同僚が多く働くことになるから」、3位が「上司・同僚が有給休暇を取らないから」となっています。

従業員が休暇を取りやすくするためには、有給取得の期日を会社が指定することもできますが、ユニークな制度を設けて従業員側から積極的に有休を活用できるようにしている企業もあります。

例えば、自分の好きなアイドルや声優、二次元キャラクターの記念日に休暇を取得できるジークレストの「推しメン休暇制度」は、趣味を堂々と楽しめる制度です。また、通常であれば2年で消滅する有給休暇を20日まで積み立てておけるデンソーソリューションの「やすらぎ休暇」のように、突然のライフイベントが発生した際に助けとなる制度もあります。

健康経営の実現

ワークライフバランスの実現は、健康であってこそです。長時間労働やたび重なる休日出勤などで心や体の調子を崩してしまったら、短時間であっても働き続けるのは難しくなります。従業員が健康を損なう前に、労働時間の短縮やストレスチェックの実施などの支援を行いましょう。

例えば、テレワークを導入することで「運動不足になりやすい」「孤独を感じてふさぎ込んでしまう」というデメリットが生じることもあります。そのため、日頃から意識して体を動かしたり、精神的な疲れをケアできる仕組み作りが重要です。

健康経営を促進するためには、例として以下のようなサービスを導入する方法が考えられます。

健康管理アプリ 食事や運動など日々の生活を記録し、AIや専任のアドバイザーからデータに基づいた生活改善のアドバイスがもらえる
宅食サービス 栄養バランスに配慮した食事をオフィスに据え置きまたは各社員の自宅に届けてくれる
ストレスチェックサービス オンラインで質問に回答することで、従業員のストレス状況を分析し職場の問題点を洗い出せる

現在のワークライフバランスの課題

早くから「ファミリーフレンドリー」(育児や介護といった家族的責任を負う従業員への配慮)の考え方が根づいていたアメリカと違い、日本では生活を犠牲にする働き方が当然とされ、それで成功してきた歴史があります。ワークライフバランスの推進は、いわば従来から続けられてきた日本的な働き方と逆方向に舵を切ることであり、問題に直面している企業は少なくありません。ワークライフバランスを推進するにあたっての問題点について解説します。

ワークライフバランスの希望と現状が一致していない

ワークライフバランスを実現したいと考える企業は多いものの、希望に沿った働き方ができているのは限定的で、理想と現実にはかなりの隔たりがあるのが現状です。内閣府の「<仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2019」では、「仕事」「家庭生活」「地域社会・個人の生活等」の3つのうち、どれを優先したいかという質問に対して、「家庭生活を優先」「仕事と家庭生活をともに優先」と回答した人の割合が高く、正社員男性で59.1%、正社員女性で62.6%という結果でした。しかし実際に優先していることになると「仕事」という回答が正社員男性で50.5%、正社員女性では42.8%と多数を占め、理想と現実が一致していない人が一定数いることが分かります。

また、「仕事のために家族と過ごす時間が足りないと感じることがよくあるか」という質問では、小さな子どもを持つ人ほど「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と答えた人の割合が高く、末子が未就学児の正社員男性では47.3%、末子が未就学児の正社員女性では59.3%となっています。「もっと家庭での時間を持ちたい」と考えている人が少なからずいることは、社会全体が抱える大きな課題です。

さらに、テレワークの普及により「仕事とプライベートの区別があいまいになり、いつまでも仕事をしてしまう」「定時で終了しなかった業務を隠れて行う」など、長時間労働が加速しかねないことも指摘されています。企業には、新しい仕組みやシステムの導入だけに留まらず、マネジメントや業務フロー全体の抜本的な改革が求められているといえるでしょう。

生産性低下のリスク

ワークライフバランスを推進することは、企業の業績や労働生産性に正の相関関係があることは前述しました。ただしこれは、「作業を自動化できるツールの導入」や「不要な業務の削減」「人員配置の見直し」といった会社ぐるみでの改革を行うことを前提としたものです。

仕事の仕組みを全く変えず、ただ単に労働時間だけを短くするだけでは、生産性低下のリスクがあります。ワークライフバランスの推進により従業員のモチベーションが高まる側面はありますが、それだけでは限界があります。

ワークライフバランスの推進により生産性向上を図るためには、ただ単に制度を変えるだけでなく、これまでの組織や業務のあり方から見直し・テコ入れしていく必要があるといえるでしょう。

コストがかかる

労働生産性をアップさせるためのデジタル化や新しいツールの導入には、それなりのコストがかかります。これは増員や設備投資に関しても同様です。全てを自社で賄うのではなく、アウトソーシングを視野に入れるなどの工夫をしましょう。

システムの導入や刷新は、長い目で見ればコストダウンにつながることも少なくありません。目先のコストだけにとらわれず、長期的なビジョンを持つことも重要です。また、テレワークの導入にあたって必要となる機器やツールの導入に関しては、政府や都道府県で設けられた助成金・補助金が使える場合があります。

例えば、全国の中小企業が使える補助金として、「IT導入補助金 低感染リスク型ビジネス枠(特別枠C・D類型)」があります。支援機関への相談・審査を経てITツール導入費用の一部の補助を受けるものです。「特別枠C・D類型」は通常枠に比べて補助率が最大2/3に拡充されており、450万円までの補助が受けられます。

中小企業向けの助成金・補助金を独自に用意している都道府県もあります。

このような制度を賢く活用して、生産性向上に取り組んでいきましょう。

ワークライフバランス推進 成功のポイントは?

ワークライフバランスは、制度を設けただけで根づくものではありません。時短勤務やフレックス制を取り入れたとしても、誰も使わなければ形骸化してしまいます。

ワークライフバランスの推進を成功させるにはまず、経営のトップや管理職から積極的に発信し続けることが何よりも重要です。職場全体が同じ方向を向かなければ、ワークライフバランスは実現しないからです。経営のトップがワークライフバランスの重要性や必要性を説き、企業にとっても個人にとってもプラスだと伝えることには大きな意味があります。

ただしそのためには、経営者自身がワークライフバランスの理念を正しく理解しなくてはなりません。そのうえで実務を主導する担当者や担当部署を設け、ワークライフバランスの実行部隊となってもらいましょう。ワークライフバランスを推進するには、上から順に浸透させ、地道に裾野を広げて個人が「自分の問題」として認識できるようにすることが大切です。

ライフ・ワーク・バランス認定企業とは?

ライフ・ワーク・バランス認定企業」とは、東京都が認定した”生活と仕事の調和の実現に向けて、優れた取組を行っている中小企業等”のことです。毎年公募が行われ、応募企業のなかから東京都が毎年13社前後を選定し、表彰しています。認定企業をチェックすることで、どのような取り組みがワークライフバランスの実現に向けて評価されたのかを知ることができます。

ライフ・ワーク・バランス認定企業のメリット

ライフ・ワーク・バランス認定企業に認定されると、以下のように、東京都による企業PRのサポートが受けられるなどのメリットがあります。

  • 東京都に取り組み内容を紹介するDVDやリーフレット作成してもらえる
  • 「認定企業ロゴマーク」を自社の名刺やWebサイトに表示できる
  • 「TOKYOはたらくネット」や東京都が実施する広報で認定企業として広く公表される
  • 東京都が行う入札(総合評価方式)で加点されることがある

ライフ・ワーク・バランス認定企業一覧

令和元年度(2019年度)の審査で「ライフ・ワーク・バランス認定企業」に選定された企業を紹介します。この年度は7つの企業が認定を受けました。なお、2020年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため募集が休止されています。

まとめ

個人の働き方や価値観が多様化してきた今、企業に求められるのは「ワーク」も「ライフ」も充実させられる積極的なサポートです。もはや、従業員個人の充実度・幸福度と企業のパフォーマンスは切り離して考えられるものではなく、双方にとって望ましい関わり方を模索していくことで、結果として企業全体での生産性向上や組織の強化につながります。

そして、それぞれの企業でワークライフバランスの推進に取り組むことが、日本・世界全体の課題解決にも繋がります。

しかし、実際の現場では、必ずしもワークライフバランスを実現できているとはいえません。企業は労働人口が減少する将来を見据えつつ、ワークライフバランスの課題と真摯に向き合っていく必要があるでしょう。