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ミッション・ビジョン・バリューのない経営は危険。その効用や作り方を徹底解説

ミッション ビジョン バリュー

経営において、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV:Mission Vision Value)は進むべき方向の「よりどころ」となる大事な役割を持っていますが、未知株式会社の調査によると、MVVを「作成していない」と回答した企業は71.4%にも上ります。

MVVは単なる形式的な理念ではなく、会社としての一体感やモチベーションの醸成、経営判断、採用といった現実的な場面で役立つ重要なツールです。特に、まだ会社として未熟なスタートアップでは、MVVがあることで各メンバーの自律的判断が可能になり、たとえ組織が不完全な状態だとしても、全員が同じ方向へ進みやすくなります。

この記事では、MVVの定義と重要性・効果に加え、具体的なMVVの作り方と浸透させる方法についても解説します。

1.ミッション・ビジョン・バリューとは
1-1.会社におけるミッション・ビジョン・バリューの位置づけ
1-2.ミッションの定義
1-3.ビジョンの定義
1-4.バリューの定義
2.ミッション・ビジョン・バリューの重要性とその効果
2-1.経営判断が行いやすくなる
2-2.採用で有利に働く
2-3.従業員の働きやすさ・やりがいにつながる
2-4.会社規模が大きくなっても一体感を醸成しやすい
3.ミッション・ビジョン・バリューの作り方
3-1.考えるべきタイミング
3-2.MVVの決め方・作成方法
4.ミッション・ビジョン・バリューをいかに浸透させるか
4-1.経営者自身が体現する
4-2.日々発信する
4-3.戦略や制度に織り込む
4-4.評価・表彰の仕組みを設ける
4-5.長期的に継続する
5.ミッション・ビジョン・バリューを実践している企業事例
5-1.スターバックス コーヒー ジャパン株式会社
5-2.楽天グループ株式会社
5-3.ヤフー株式会社
5-4.キリンホールディングス株式会社
5-5.株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
5-6.freee株式会社
5-7.株式会社クラス
6.ミッション・ビジョン・バリューに関するよくある疑問
6-1.MVVは全て作らなければいけない?
6-2.MVVは途中で変えても良いの?
6-3.MVVに似た言葉との違いは?
7.ミッション・ビジョン・バリューによって一貫性のある経営を実現する

ミッション・ビジョン・バリューとは

日本語に訳すとミッションは「使命」、ビジョンは「ありたい姿」、バリューは「価値基準」です。

MVVは現代経営学の父と呼ばれるピーター・ドラッカーが、著書「ネクスト・ソサエティ」(原題:Managing in the Next Society)のなかで2003年に提唱しました。他にも同氏の著書「ドラッカー5つの質問」でも語られています。

しかし、ミッション・ビジョン・バリューそれぞれの位置づけや意味合いの違いが明確に把握できていない人も多いのではないでしょうか。まずは、用語の定義や会社組織における位置づけについて解説します。

会社におけるミッション・ビジョン・バリューの位置づけ

MVVは会社の成り立ちにおける最上位概念といえます。いわば、企業の戦略や制度にとっての「背骨」となるべき存在です。

具体的な事業戦略や機能戦略などの1つひとつの項目が、ミッション・ビジョンに基づいて規定されます。

また人事制度をはじめとした各種制度は、MVVのうち特にバリューが根幹になっているべきです。

MVVがない状態で、「優れた戦略や制度があるから安心」と思う場合は要注意です。その戦略や制度はそれぞれの内容が矛盾していたり、方向性が間違っていたりする可能性があるためです。自社に合ったMVVを設定し、経営の「背骨」を作る必要があります。

ミッションの定義

ミッションとは、社会において企業が果たすべき「使命」や、社会に存在する「意義」を表したものです。

会社は何のために存在し何を成し遂げるべきなのか、業績や経営上の成功だけでなく「社会」にも目を向けて定義した、役割や存在意義のことを指しています。

会社の「将来」や、実現したい目標を定義するだけでなく、「現在」の行動の土台にもなる基本指針がミッションです。ミッションはビジョンやバリューを決める土台となり、細かい戦略や組織作りをするうえでの指針となります。

ビジョンの定義

ビジョンとは、「ミッションを実現する過程での、自社のありたい姿」です。社会に対する使命や意義にフォーカスするミッションとは異なり、自社のあり方や理想像に注目するのがビジョンの本来の定義ですが、ミッションとビジョンは密接な関係があるため、区別が難しい場合があります。

例えば、ヤフー株式会社はビジョンを「世界で一番、便利な国へ」としており、ビジョンの中でミッションにあたる「社会としてのありたい姿」を謳っています。ミッションの定義にも共通して、大枠で「自社のありたい姿」や「成し遂げたい社会の姿」が語られているならば、必ずしも形として分ける必要はないでしょう。

バリューの定義

バリューは「企業において重要とされる価値や行動基準」のことです。

ビジョンへと向かう過程で推奨されるべき「行動」や「思考」のことを指しています。

ミッションやビジョンを「目的地」に例えるなら、バリューはそこに至るまでの「マイルストーン」となる具体的な道筋や方法を示したものです。

ただし、なかにはバリューを「お客様に約束する行動指針」として外部に向けた指針を定義し、それとは別に社内向けの指針をカルチャー(Culture)などの形でまとめているケースもあります。このタイプの具体例は株式会社マネーフォワードなどです。同社は、「マネーフォワードが社会に約束する行動指針」として、「User Focus」(ユーザー志向)、「Technology Driven」(テクノロジーの追求・提供)、「Fairness」(フェアでオープンな姿勢)を宣言しています。

ミッション・ビジョン・バリューの重要性とその効果

MVVを設定することは、なぜ重要なのでしょうか。あってもなくても「業績にはあまり影響がないのではないか」と感じるかもしれません。MVVを設定する重要性と効果について、主な4つの点を以下に解説します。

経営判断が行いやすくなる

重要な意思決定を行う際に「方向性のブレ」が起こりにくくなることが、MVVを作るメリットの1つです。

常にMVVを意識することで、「MVVに沿っていないことはやらない」という判断ができるため、会社の本質から外れた無駄な企業活動を防ぐことができます。

判断がしやすくなるという効果は、経営者以外にも当てはまることです。意思決定の大きな指針があることで、各部門や個人単位でもMVVに沿った「自律的な意思決定」を行いやすくなります。

採用で有利に働く

「採用の効率」や「集まる人材の質」が高まることも、MVVがもたらす効果の1つです。

MVVを設定したことで、すぐに応募者数が増えるとは限らないものの、採用のスクリーニング精度が向上する点では大きな効果が期待できるでしょう。MVVが明確に掲げられていることで、自社に合う人材を引き寄せ、逆に合わない層からの応募を減らすという効果が生まれます。また採用判断をする側にとっても、MVVがあることで、会社に求められる人材を見極める精度を向上させる事が可能になります。

長期的には、社会的意義が大きいと感じられるミッションや共感を覚えるバリューを設定できているならば、「応募者数」自体の増加も期待できるでしょう。

従業員の働きやすさ・やりがいにつながる

MVVは、従業員に対してもプラスの影響を与えるものです。MVVがあることで従業員が仕事の方向性を理解しやすくなり、仕事のしやすさにつながります。

自分が「何のために働いているか」という点や、会社の目指すミッション・ビジョンに「どのように貢献しているか」を自覚しやすくなることは、モチベーションアップに大きく影響する要素です。

その結果、従業員の定着率アップや生産性の向上などにつながることが期待できます。

会社規模が大きくなっても一体感を醸成しやすい

MVVによって、大きな会社でも「一体感のある経営」がしやすくなります。

会社の規模が大きくなると従業員の人数も増え、それぞれの考え方や仕事の方向性の違いが発生しやすくなることに注意が必要です。

ミッションやビジョンで会社の向かう先を統一し、バリューで共通の価値観を醸成することで、メンバーが増えても一体感を保ち続けやすくなります。

ミッション・ビジョン・バリューの作り方

MVVを作るには、タイミングや抑えるべきポイントを把握し、「最終的に誰が決定するべきか」も意識しておくことが重要です。MVV作成の基本的な方法を以下に解説します。

考えるべきタイミング

MVVは経営・起業において「できるだけ早い時期」に設定すべきだといえるでしょう。

MVVがない状態での経営は、背骨がないまま会社が活動をしているに等しい状況です。可能な限り早く、起業前であれば会社を興す前にMVVを設定しておけるのがベストです。

もし、既に事業をスタートさせているのにMVVが存在しないのであれば、今すぐにでもMVVの設定に着手しましょう。

MVVの決め方・作成方法

具体的にMVVを決めていく方法について、「誰が決めるか」「内容をどのように決めるか」「どのように言葉を選ぶか」という3つのポイントに絞って以下に解説します。

経営者が決める

MVVは他の誰でもなく経営者が決めるものです。他者の意見やアイデアを求めても良いですが、最後は経営者自身や経営層がMVVを決めなければなりません。

なぜなら、MVVは、経営者が信念を持って社内外で訴え続けるべきものであり、経営者が決めた魂のこもったMVVでなければ、それは実現できません。

ボトムアップで従業員に決めさせたり、MVVを決めるプロジェクトチームとして経営者以外を組成したりなど、経営者以外にMVVを決めさせる状況は避けるべきです。

顧客や自社について十分に分析して決める

MVVを決める際には、顧客や自社など「WHO:誰」にあたる要素をよく検討することが重要です。

自社が対象とする顧客を具体化し、できるだけ絞り込むことでMVVを決めやすくなります。また社内環境にも目を向けるなら、自社の現状とミッションやビジョンとの「ギャップ」や、バリューとすべき「行動」が具体化していくはずです。

顧客と自社の分析をすることで、現実的で実際に効果を発揮できるMVVを考えやすくなります。

分かりやすさと語呂も意識する

MVVを作る際には「意味が分かりやすいこと」と「語呂が良くて雰囲気のある言葉選び」も重要です。

せっかく作ったMVVも、その意味が分かりにくければ、適切に効果を発揮できなくなってしまいます。作ったMVVの意味を通りやすくすることは大前提です。例えば、定義の分かりにくい言葉を使う際には、その意味の説明を添えるなどの配慮が必要でしょう。

とはいえ分かりやすさだけを追及しても、長すぎたり、印象が薄くて覚えにくかったりなどのマイナス面が出てくることがあります。「語呂」や言葉としての「雰囲気」も重視し、インパクトのある言葉を選ぶことも重要です。

ミッション・ビジョン・バリューをいかに浸透させるか

せっかくMVVを作っても、それが社内に浸透し、実際のアクションや成果につながらなければ意味がありません。MVVを「絵に描いた餅」にしないためには、それを浸透させる活動に力を入れる必要があります。意識すべき5つのポイントを見ていきましょう。

経営者自身が体現する

MVVを浸透させるには、経営者自身が率先してMVVを行動で示し、浸透する活動に力を注ぐのが前提です。

そうしなければ説得力がなくなり、浸透を妨げてしまうでしょう。

朝礼や日々のミーティング、イベントでの挨拶など、事あるごとに発言に含めることはもちろん、日頃の仕事ぶりにもMVVが反映されるように意識する必要があります。

日々発信する

経営者個人だけでなく、企業全体として日々MVVを発信することも重要です。

Webサイトやポスター、グッズなど、MVVを発信できる場所を積極的に利用していきましょう。

文字としての発信だけでなく、研修・ワークショップなどを開催してMVVの浸透を促すこともできます。

戦略や制度に織り込む

MVVを会社の「戦略」や「制度」に盛り込むことは必須です。単にMVVを作って提示し、具体的なアクションを従業員に丸投げするだけでは、実際の効果を得ることはできないでしょう。

会社としてのあらゆるアクションがMVVに貢献するように、人事制度や評価制度、マーケティング計画などを作成します。

経営のベースとなる「事業計画」そのものがMVVを基準に作成されていることがベストですが、MVVがない状態で事業をスタートしてしまったのであれば、できるだけ早い段階でMVVを作成して事業計画を調整することが必要です。

評価・表彰の仕組みを設ける

MVVを実践している人に対する「評価・表彰」の制度を設けることで、従業員が「MVVを実践している感覚」を味わえるようにすることも重要です。

一定の条件を達成してMVVに貢献した人のために定期的な表彰式を設定し、インセンティブを授与するなど、評価を「目に見える形」にすることで、MVVに対する意識を高めることができます。

年に1回など長いスパンで評価するのではなく、毎月や毎週など、できるだけ短いスパンで評価できるように工夫し、評価・表彰の仕組みを日常的に取り入れることも重要です。

評価を決める際には、必ず「どのような基準で決めているのか」を明確にして、担当者の感覚で決めているかのような印象を与えないように注意する必要があります。

長期的に継続する

社員・従業員全体がMVVを習慣化・継続化するような仕組みも必要です。

一時的にMVVを実践できたとしても、それが継続されなければ意味がありません。それが継続・習慣化し、努力せずとも自然にMVVを体現できることが理想です。

上記で解説した日々の発信や、達成感を味わうための表彰などの基本を継続し、MVVを会社の「あたりまえ」にまで持っていくことを目指す必要があります。

ミッション・ビジョン・バリューを実践している企業事例

参考として、実際の企業が設定しているMVVの事例を7つ紹介します。

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社では、ミッションとバリューの2つを設定しています。

バリューが「私たちはパートナー、コーヒー、お客様を中心とし、Valuesを日々体現します」という宣言の形になっており、従業員が読むことで行動につながりやすい表現になっている点が参考にできるでしょう。

出典:Our Mission and Values|スターバックス コーヒー ジャパン

楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社では、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というミッションに対して、ぴったり当てはまるように「グローバル イノベーション カンパニー」というビジョンを設定し、一貫性のある内容を設定しています。

さらに、バリューに「楽天主義」という覚えやすいワードを使用し、浸透しやすい工夫がなされているところもポイントです。

出典:企業理念|楽天グループ株式会社

ヤフー株式会社

ヤフー株式会社はミッション・ビジョンの2つと、バリューの代わりに「ステートメント」を設定しています。

ステートメントの内容には、バリューのような具体的な行動ではなく「100を超えるサービスを通じて、日本を、世界で一番、便利な国へ」として、実現したい将来像をメインに記載していることが特徴です。

出典:ミッション・ビジョン・ステートメント – 企業情報 – ヤフー株式会社

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社ではMVVと合わせて「CSVパーパス」も設定しています。

CSVパーパスには、「新型コロナウイルス感染症拡大に対するキリングループの取り組み」が盛り込まれており、時代の変化に対応していることが伝わる内容です。

出典:企業方針 | 企業情報 | キリンホールディングス

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)

株式会社ディー・エヌ・エーは、バリューを社外向けの「DeNA Promise」と、社内向けの「DeNA Quality」の2つに分ける方式です。それぞれをさらに「プロダクト、サービスへのこだわり」や、「全力コミット」などの細かいアクションに落とし込んでいます。

公式サイトには、MVVそれぞれの定義が日本語で併記されていて、専門用語を知らない人にも分かりやすくしている点もポイントです。

出典:ミッション・ビジョン・バリュー | 株式会社ディー・エヌ・エー | DeNA

freee株式会社

freee株式会社が設定しているのは、ミッションとバリューの2つです。

ミッションは「スモールビジネスを、世界の主役に。」、ビジョンは「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム。」として、短く簡潔な言葉で表現しています。

公式サイトには、それぞれの意味を詳しく説明する文章も記載してあり、覚えやすさと分かりやすさを両立した内容です。ムービーも用意されていて、イメージしやすい工夫があります。

出典:ミッション | freee株式会社

株式会社クラス

株式会社クラスが作成しているのはビジョンとバリューの2つです。

ビジョンには「『暮らす』を自由に、軽やかに」を掲げ、社会における存在意義(ミッション)、とサービスとしてありたい姿(ビジョン)の両方を同時に表現しています。

バリューには具体的な5つの項目を記載して、ビジネス上の行動全般をカバーしながらも具体的に取るべきアクションを明確化している点もポイントです。

出典:会社概要・求人情報 | 家具・家電のサブスクリプションサービス CLAS(クラス)

ミッション・ビジョン・バリューに関するよくある疑問

MVVを作成するにあたって、経営者が直面しやすい3つの疑問について、それぞれの回答を以下にまとめました。

MVVは全て作らなければいけない?

MVVは必ずしも、3つ全て揃っていなければならないわけではありません。

例えば世界的な消費財メーカーであるジョンソン・エンド・ジョンソングループは、コアバリューである「我が信条(Our Credo)」のみが1943年に制定されて以来、それが変わらずに守られてきました。

株式会社メルカリも、ミッションとバリューの2つを設定し、ミッションのなかで社会的な存在意義と自社のありたい姿を語っています。そして株式会社クラスも、ビジョンのなかで、社会における存在意義と、サービスとしてありたい姿を双方語り、ミッションという言葉は使っていません。

会社の「存在理由」と「ありたい状態」、そして社員・従業員が大事にすべき「価値観」の3つが明確であれば、必ずしもMVVの形に縛られる必要はありません。経営者自らが信念を持って語れる内容ならば、形式にとらわれる必要はないのです。

とはいえ、まずはMVVの3つに整理して分析するなら、盛り込むべき内容を網羅しやすくなります。最終的にどのような形にまとめるかは自由ですが、作成するうえでの基本としてMVVの考え方を押さえておくことは重要です。

MVVは途中で変えても良いの?

一度決めたMVVを変えるのは悪いことではありません。

むしろ、ずっと同じまま放置するのではなく、社内への浸透状況や市場の変化なども見ながら、定期的な見直しをすることも重要といえます。経営の軌道修正をする必要があるなら、それに合わせてMVVも調整する必要があるでしょう。

ただし大きな変更が頻繁に行われると従業員の混乱を招くこともあるので、MVVに変更を加える際には、経営のブレや矛盾が発生しない範囲で行うように注意する必要があります。

MVVに似た言葉との違いは?

MVVの意味を把握するには、他の言葉との違いを把握しておくことも重要です。意味が似ている4つの言葉について、それぞれの違いを以下に解説します。

企業理念

企業理念は「会社の考え方」の基本を表現した言葉です。MVVを含め、企業全体を包括する考え方の指針となります。

企業編成が大きく変わるなどのことがない限り、企業理念の見直しが行われることは基本的にありません。一方のMVVは、時代の変化やビジネスのフェーズなどに合わせて調整されることがあります。

パーパス

パーパス(Purpose)は、会社の「社会的な存在意義」のことです。

MVVのなかではミッションと意味が似ていますが、ミッションは「何」を行うかで、パーパスは「なぜ」行うかに焦点を当てています。

またミッションでは「将来的」に実現したい何らかの目標や結果を提示することが多くありますが、パーパスでは「現在」の企業の社会的な意義に注目し、なぜ企業活動を行うのかを提示するのが一般的です。

MVVの3つとは少し違った観点を示しているため、MVVとパーパスの両方を設定することもできます。

クレド

クレド(Credo)とは、従業員1人ひとりの行動指針・信条のことです。バリューと意味が似ていて、実際「ミッション・ビジョン・クレド」と置き換えられることもあります。

バリューとクレドは共に行動指針・基準を示しますが、違いは「誰の」行動指針かという点です。バリューは主に「企業全体としてどのような行動基準に沿っていくのか」を示すのに対し、クレドは主に「従業員1人ひとりがどのように行動するか」に注目します。

社是

社是は、経営理念を短い言葉や箇条書きなどでまとめた標語です。

「社訓」に近い言葉で、社訓は経営者などが従業員(社内)に向けて示す教えや教訓であり、社是は社内・社外を問わず提示する理念を表します。

企業理念とほぼ同じ意味ですが、社是はオフィスの壁などに提示しやすいよう標語としてシンプルにまとめられることが多い点が特徴で、会社によっては四文字熟語の形式で作成することがあります。例えばキユーピーグループの社是は「楽業偕悦(らくぎょうかいえつ)」の四文字です。

出典:理念 | 企業情報 | キユーピー

ミッション・ビジョン・バリューによって一貫性のある経営を実現する

MVVは単なる飾りではなく、会社の経営に「実際の効果」をもたらす重要な要素です。経営判断の基準となり、会社としての一体感や、従業員のやりがいの醸成などにもつながります。

作成する際には、対象とする顧客層や社内の状況をよく検討して内容を決め、分かりやすさや語呂も意識した言葉にすることが重要です。

決めるだけでなく会社全体に浸透させて「あたりまえ」のものにするために、具体的な戦略・制度にまで落とし込まなければなりません。また経営者自身もMVVを体現しなければ浸透が難しくなります。MVVの内容に情熱を持てるよう、経営者自身が決めることが重要です。

MVVを適切に設定し、社内外に浸透させることができれば、質の高い経営を実現することができるでしょう。